最悪の場合、相手を死に至らしめるほどの陰湿ないじめは日本だけでなくヨーロッパでも増加の傾向をみせており、大きな社会問題となっている。オランダで先日、長年にわたるいじめが原因で自らの命を絶った青年の両親が、彼の遺書の一部を新聞に掲載したことでオランダ中に衝撃が広がっている。
ヨーロッパでは、遺族が亡くなった人を偲び掲載する広告を新聞上で見ることができる。今月初め、オランダ東部ティルリグテで命を絶った20歳の青年の両親が「愛するママとパパへ。僕は長年にわたって馬鹿にされ、いじめられ続けた。でもママとパパは、僕のことを怒らないでほしい」と書かれた息子の遺書の一部を広告に掲載した。これはオランダ全土に衝撃を与え、同国でも増加の傾向を見せるいじめ問題に対する議論を新たに呼び起こすこととなった。
両親は遺書の一部を広告に掲載したことについて、「私たちはいじめの加害者を晒し者にしたいのではなく、人をいじめることがどのような結果を引き起こすか、加害者にこうしたことをよく考え認識してもらいたかったのです」と話している。
遺書にはこの他にも、青年が小学生の頃から自殺前に学んでいた教育大学に至るまでずっとひどいいじめに遭い続けていたことや、さらにはインターネット上でも悪口雑言を浴びていたことなどが記されていたという。青年と両親は仲の良い家族であったが、息子がいじめられていることは遺書を読むまで全く気がつかなかったと両親は語る。
だがいじめに気がつかなかったのは両親だけでなく、青年が通っていた学校の教師や教授たちも同じであった。これは彼が非常に内気な性格であり、いじめられていたことを隠し続けていたのもその理由の1つであるが、専門家はこれについて「いじめに関する合図が出されていたとしても、残念なことに周囲はそれになかなか気がつかないものなのです」と説明している。
青年の両親は彼の死を無駄にしたくないといった意志を示しており、記者会見に向けた原稿を現在作成しているという。「決して、決して、決して諦めない。屈服しない」というイギリスの元首相チャーチルの言葉で始まるこの原稿を公の場で読み上げることで、いじめ問題を認識し解決に繋げるための議論が世間に巻き起こることを両親は強く望んでいる。
(TechinsightJapan編集部 椎名智深)