writer : yonashi

【ドラマの女王】“鉄板”のキャラ設定と絶妙の“間”が功を奏した。NHKが挑む大人の三角関係『はつ恋』。

初恋をストーリーの軸にした作品は過去にも多くある。そんな初恋を題材にしたNHKドラマ10『はつ恋』の放送が開始された。

初恋の人に裏切られなかなか立ち直れなかった過去を持つ言語聴覚士の村上緑(木村佳乃)は、夫・潤(青木崇高)との出会いで幸せな家庭を築いていた。ある日、緑は肝臓がんを宣告され、さらにその手術はとても難しいものだと告げられる。潤のおかげで、緑を救える医師を見つけるも、その医師・三島匡(伊原剛志)は緑の初恋の人だった。

現在第2回まで放送されているが、進みはゆったりでまだ冒頭の冒頭でしかない。緑と三島がつき合っていた様子は所々の回想で予想出来るが、お互いの口から直接そのことに触れていない。回想シーンと2人の無言の表情から推測するしかない。このタイミングが絶妙なのだ。初回の2人が再会するシーンでは、無言のまま数十秒が経過した。その長さと表情がそれまでの少ない回想シーンと合致し、その絶妙な間で2人の関係を物語っていた。

さらに、緑と失語症の患者・中山貞夫(大竹まこと)とのシーンでも、その“間”があった。会話のないわずかな時間だが、手術する緑を励ます中山の姿に感動した。中山の表情と仕草だけで緑を慕い、どれだけ心配しているかが伝わってくるのだ。本当に言葉だけではないということを表しているドラマだ。

そして、主要3人のキャラクターがハッキリしていることもドラマを面白くしている。緑の実直なところ、一途に緑を愛する潤は少し冴えないが絵に描いたような愛妻家、無愛想であまり感情を表に出さない三島と、それぞれが全く違う色をしている。特に潤と三島が対極な性格であることは三角関係において“鉄板”とも言えるが、そう感じないから不思議だ。三角関係の話というより、3人それぞれの物語のようにも見える。それだけ3人のキャラクターがしっかりしているのだ。

キャラクターがしっかりしているからこそ、それ以外はとてもシンプルに出来るのかもしれない。よく見れば、全てはとても単純なのだ。それがなぜか複雑に絡まってしまう。そこから徐々に生じるすれ違いから物語はどのように動くのか、今後も目が離せない。

たまに出てくる緑の同級生で弁当屋を営む広瀬夫婦(カンニング竹山、安藤玉恵)のやりとりが、視聴者の思いを代弁しているあたりもにくい演出だ。
(TechinsightJapan編集部 洋梨りんご)