エンタがビタミン

writer : maki

【エンタがビタミン♪】「でんでらりゅうば…」。仲里依紗が出演する“方言CM”の歌に潜む意外な歴史!

トヨタPASSO(パッソ)のCMで、仲里依紗が出演する方言シリーズが面白い。現在放送されている“でんでらりゅうば”という長崎のわらべ歌も、リズミカルでコミカルな感じの歌詞が楽しい。実は、この歌には地元でもあまり知られていない意外な歴史があるのだ。

女優の仲里依紗が、トヨタPASSOのシートに横たわり“手遊び歌”を披露するCMが話題となっている。仲里依紗はこれまで同CMで“津軽弁篇”や“ムムマッファ篇”で方言を話しているが、今回の“でんでらりゅうば篇”は彼女の出身地、長崎の歌でもある。

2月4日放送の福岡のローカル番組『笑顔7県・九州まるごとサプライズ』(FBS)で、タイムリーに“でんでらりゅうば”のルーツを探っていた。お笑い芸人の博多大吉が現地で聞き込み調査したところ、歌詞の意味だけでなく歌が誕生したルーツも分かる意外な展開となったのである。

長崎県民のほとんどは“でんでらりゅうば”の歌を知っており、代表的な祭り『長崎くんち』でも使われるほど浸透している。しかし、その歌詞について尋ねると「意味は分からない」との反応が多い。

そんな中で、地元神社の宮司さんの証言によると「出てこようとして出られない」との内容を長崎の方言で歌ったもので、昭和50年代にカステラの老舗、文明堂総本店がCMに使ったことで広まったそうだ。

文明堂といえば「カステラ1番、電話は2番、3時のオヤツは文明堂」のCMソングで有名だが、文明堂総本店によると長崎限定で『わらべ歌シリーズ』として流したCMのひとつが“でんでらりゅうば”を使用したものだと分かった。当時のCMを見ながら文明堂関係者が語ったところでは、「『長崎のわらべ歌をもっと知ってもらいたい』との思いで、このCMシリーズが作られた」とのことである。

CMの画面に映し出された”でんでらりゅうば”の歌詞は次のようなものだった。

『でん出らりゅうば 出てくるばってん でん出られんけん 出てこんけん こん来られんけん 来られられんけん 来ん! こん!』(CM画面では『ん』は小文字表記)

方言なのでニュアンスを伝えるのは難しいが、大まかな意味は「出られるものならば、出て行くけれど、出ように出られないから出て行かない…」となる。九州の方言に多い『行く』と『来る』が同じように使われるパターンで、「来ない(こん)」は『行かない』なのだ。

さらに驚いたのが、CM作成時の資料にあった「明治38年、日露戦争時に流行った『長崎節』が変化して“でんでらりゅうば”となった」という記録だ。

『長崎節』の節回しは“でんでらりゅうば”に似ており、その歌詞の一部を紹介すると「ロシヤの軍艦なぜ出んじゃろか 出られんけん 出ん出られりゃ出るばってん…(中略)コサック騎兵は なぜ来んじゃろか 来られんけん 来ん来られりゃ来るばってん…」というものだ。

歌詞が日露戦争当時の内容から時を経て、より親しみやすい語呂合わせに変わり、現在の“でんでらりゅうば”が誕生したのである。

CMの“でんでらりゅうば篇”では、仲里依紗ともう1人、川口春奈が出演しているが、彼女も長崎県出身だ。2人の会話「とっとーとっ!?」「とっとぉとよっ」は、「撮ってるの?」「撮っているんだよ」という意味なので念のため。

この『とっとーと?』のフレーズは、タモリや武田鉄矢など博多出身の芸能人が、「取ってるの?」「取っているよ」との意味で博多弁を紹介する際に使うことが多い。

前述した同CMの“ムムマッファ篇”では、沖縄宮古島の言葉『ムムマッファ』が膝枕を意味することが広く知られることとなった。今回も“でんでらりゅうば”の歌の存在だけでなく、そのルーツも知るとより一層楽しめそうだ。
(TechinsightJapan編集部 真紀和泉)