米大リーグ・レンジャーズへの移籍が決まったダルビッシュ有投手の記者会見が、24日札幌ドームで行われた。この会見でダルビッシュを困惑させ、苦笑させたNHK記者がネット上で大きな話題となっている。
「移籍の理由は(日本の)ファンの皆さんの前で一番にちゃんと言いたい。」札幌ドームに詰め掛けた1万人を超えるファンの前に立ったダルビッシュの表情は、穏やかで笑顔にあふれていた。彼の“ファンへの感謝の気持ち”が十分に表れていて、ファンも「ダルビッシュ、大リーグでも頑張れ!」と気持ちよく送り出せるような素晴らしい会見であった。
それは報道各社の代表質問が終わり、挙手による自由質問に入った時であった。最初に選ばれたあるテレビ局の質問が説明不足の内容で、「意味がちょっと分らない、どういうことですか?」と怒ってはいないが毅然とした態度でダルビッシュは聞き返した。このやり取りを聞いていた問題のNHK記者は、緊張してしまったのだろうか。
その後指名され、そのNHK記者が話し始めた。「その、大リーグの、を決めた理由なんですが…」、「ダルビッシュ(思わず呼び捨て)、あっダルビッシュさん、おっしゃってましたけどもぉ」しどろもどろである。ここで会場は大爆笑、ダルビッシュも微笑んでいる。さらに記者は言葉を続けるも、もっと収拾がつかなくなる事態に陥ってしまった。
「あのぉ周りから、そ、(大リーグ行きを)求められている気がしたとおしゃってましたが、その~自分の中でそのぉ、日本の野球で満足できなくなったとか、ん~そのぉ自分の中の気持ちと、その~周りから求められるっていう気持ちと、(何故かまた繰り返す)やっぱりその周りから求められている気持ちっていうのが、強かったんですかね?」
ダルビッシュも何かを感じたのかNHK記者を食い入るように見つめ、質問には真剣に耳を傾けていた。しかし途中で苦笑いし言い終わった記者に対し、困った顔で「もう一回いいですか? もうちょっと、まとめて。全然分らなかった。」と頼んだ。すると記者は「すみません。自分でも何を言ってるのかアレですけど…。」これを聞いたダルビッシュは苦笑い、会場も大爆笑し「がんばれ~」と記者に対し激励の声まであがったのだ。
この記者に対してネット上では「会社に帰ってから怒られただろうな。」、「就活中の会社説明会での質問者みたい。」、「なんか胸が締め付けられる。」と同情的だ。だがこんな意見もある。ダルビッシュが大リーグ移籍を決めた具体的な理由、“真剣に立ち向かってくる打者と勝負したかった”、“日本人に対する評価が大リーグで低くなっているのを変えたかった”を結果的に引き出せたので、このNHK記者は良い仕事をしたのではないか―との評価もあるのだ。
会見を終えたダルビッシュはスタンドに近づき、7年間応援し続けてくれたファンに手を振り頭を下げていた。泣きながら手を振っているファンの中年女性らは、「大事に育てた息子を送り出す」心境だったのだろうか。
(TechinsightJapan編集部 みやび)