2010年にスペシャルドラマとして放送された『ストロベリーナイト』(フジテレビ系)が連ドラとなって帰ってきた。前作ではその完成度の高さに圧倒されるばかりだった。連ドラとなるとクオリティが低くなってしまうのではないかと心配したが、そんな必要はなかったようだ。現在まで視聴率も大きな変動もなく16%台をキープし続け、今クール上位に位置している。
警視庁捜査一課第十係の主任である姫川玲子(竹内結子)は、ノンキャリアでありながら異例のスピードでのし上がった男顔負けのやり手刑事。男社会にもまれながらも、その天性の勘と根拠はないが、信憑性のある不思議な魅力に刑事としての姫川に魅了されている者も多い。そんな姫川を取り巻く様々な人間関係と事件を解決への様子を描く。誉田哲也の同名小説が原作だ。
前作では、事件の内容、姫川という人間性、そして一瞬でも目を離すことが出来ない展開に、画面に釘付けとなった。それだけストーリーと演出の完成度が高かった。そして、それらに負けないキャスト陣の演技力によって、より濃密なものに仕上がっていた。その完成された世界観は連ドラのような一時間という時間には不向きではないかと感じたのだが、その心配は必要なかった。一時間が、週をまたごうが、ドラマの世界観とストーリーのクオリティは下がることはなかった。それもそのはず、原作者の誉田は2011年7月クールに放送された『ジウ』の原作者でもある。『ジウ』でもストーリーのクオリティの高さを感じた。こちらも原作がしっかりしているからこそ連続ドラマとなっても、ぶれることなく完成度の高いまま仕上がっているのだろう。
それに加え、前作同様、新旧キャスト陣の演技力も大きい。竹内の周りを固めるのは、武田鉄矢、西島秀俊、小出恵介など裏のある役を得意とする役者が多い。ドラマ内でも素直に信用しきれない者が多く、新しく姫川班に入った葉山則之(小出)や姫川に好意を抱いているように見える菊田和男(西島)ですらあやしく見えることがある。それは前作の結末のせいかもしれないが。
そして中でも、竹内が群を抜いてすごいのだ。特に第3話『右では殴らない』では、違法薬物死亡事件をめぐり辿り着いた女子高生(大政絢)の軽卒な態度に対し、行き過ぎではないかと思える取り調べを行う。彼女が原因で死んだ人間の死体の写真を見せ、現実を突きつける。それでも収まらない姫川は胸ぐらを掴み、壁に叩き付け、わずか数センチのところまで顔を近づけ執拗に攻め続けるのだ。そして、最後には壁を殴る。そんな一連の姫川の姿にただただ言葉を失った。実際にそのような取り調べが行われ、公にされたら確実に問題になるのではないかと心配するレベルだ。あれはもう刑事ではなく、狂気でしかなかった。ドラマを見ていて、背筋が凍り言葉を失うような数分間を体験することはそう出来ないことだろう。なによりあの狂気を演じ切った竹内が恐ろしくて仕方ない。
さらに、このドラマのすごいところは、ラスト殴った右手を痛がり左で殴れば良かったと後悔する姫川のあとに、サブタイトル『右では殴らない』を表示して、落とすタイトルセンスだ。事件の内容かと思うサブタイトルを、あえてそこに使う。これには脱帽した。緊張と緩和が絶妙なバランスでちりばめられている。
ドラマで姫川の虜となっている男性陣同様、我々も姫川の不思議な魅力の虜となっていくのだろう。いや、もう完全に虜なのかもしれない。
(TechinsightJapan編集部 洋梨りんご)