両親の虐待を受け、子を背負いながらニューヨーク・ハーレムの地を生きる黒人少女を描いた、過酷すぎるヒューマンドラマ『プレシャス(原題Precious: Based on the Novel Push by Sapphire)』。その主役、当初はジェニファー・ハドソンにオファーが向けられていたようだ。
撮影は07年から08年にかけて行われ、日本では10年4月に公開されたこの映画。あまりにも過酷な試練と絶望的なストーリー展開に、観る人々の心がどんよりと重くなってしまったと言われている。ソーシャルワーカー役を熱演したマライア・キャリーも、女優としての力が高く評価された。
そこで主人公プレシャスを演じ、“ガボちゃん”の呼び名で日本でも人気者になったのはガボレイ・シディベ(28)。だが監督のリー・ダニエルズは当初、数々の賞をかっさらった06年の映画『ドリームガールズ』により俄然注目を集めた、ジェニファー・ハドソンを推していたようだ。
もちろん当時のハドソンは、今からは考えられないほどふっくらとしており、体重は100kg超というプレシャスのイメージを十分に表現できたであろう。だがハドソンはそのオファーを断った。間もなく発売となる彼女の自伝『I Got This: How I Changed My Ways and Lost What Weighed Me Down(原題)』にこう書かれているという。
“(ドリームガールズの)エフィの役でも肥満体型が求められていたから、私はとにかく、この体重や体型には関係のない役をやりたかったの。”
ハリウッドでは超肥満の黒人の若手女優など探せないとして、ハドソンに断られたダニエルズ監督はオーディションを行い、見事ガボレイ・シディベでその映画を成功に導いた。ガボレイもその後、TVドラマや映画の出演を順調にこなしている。
若い女性に対し、“この作品はアナタのその肥満体型を求めているんです”ではあまりにも残酷。だがハドソンは、そのオファーでついに「痩せよう」と決心した可能性もある。昨年ダイエット・カンパニーであるWeight Watchers社とイメージモデル契約をし、36kgも痩せた彼女は今、その成功本とも言える自伝でひと稼ぎしようとしている。心の中で、ダニエルズ監督に少しばかり感謝しているのかも知れない。
(TechinsightJapan編集部 Joy横手)