アニメ『それいけ!アンパンマン』(日本テレビ系)の主役、正義の味方アンパンマン。丸顔で親しみやすいキャラクターだが、どこか田舎くさく垢抜けない外見。そしてお腹が空いている人がいたら、あんぱんで出来ている自分の顔を千切って差し出す。困っている人を見れば、自己を犠牲にしてでも助け出す優しいキャラクターだ。このアンパンマンの生みの親である、やなせたかし氏(92)が「アンパンマンの元になった人物像」と、「本当の正義の味方」についてテレビ番組で語った。
10月25日深夜放送の『中居正広の怪しい噂の集まる図書館』(テレビ朝日系)では、「アンパンマンは元々、人間のオッサンだった。」という定番の噂の真相を探るべく、漫画家で絵本作家でもあるやなせ氏にインタビューを行った。
1970年に発刊された、やなせ氏作の大人向けの絵本『十二の真珠』。この絵本は12の話からなる童話集で、「アンパンマン」はその中のひとつであった。そこに描かれているアンパンマンは腹の出た、だんごっ鼻のオッサンがマントをつけた姿。ヒーローとは程遠い、かっこ悪い外見である。その童話ではオッサンのアンパンマンが子供たちに「あんぱん」を配って歩くのだが、「いらない。ソフトクリームが欲しい。」「カッコワリイ!」と最初は評判が悪かった。だが戦争が始まり飢えに苦しむ子供たちのために、焼きたての「あんぱん」を地上に向けて落として回るアンパンマン。しかし最後には爆撃されてしまうという、衝撃の結末をむかえるのだ。
やなせ氏が思う正義の味方は、「そんなにカッコいいもんじゃない。」と語る。その後アンパンマンを幼児向けの絵本として出版するにあたり、人間のオッサンがパンを配るより「あんぱん」そのものが空を飛んだりする方が面白いだろうと思い、設定を変えたそうである。
戦時中に兵役経験のあるやなせ氏は、「本当の正義の味方」とは怪獣を倒すカッコいいヒーローではなく、貧困に苦しむ人々を助ける役割を担う人という位置付けだそうだ。目の前で困っている人がいれば、全力で手を差し伸べる―これが「アンパンマン」の原点である。
特に小学校入学前ぐらいの子供たちに絶大な人気がある、アンパンマン。以前テレビ番組で、真夏に混雑している大型プール施設で迷子になった幼児が「アンパンマ~ン!」と大きな声で泣き叫んでいるのを見かけたことがある。彼らにとっては間違いなく、優しくて強い“正義の味方”なのだ。きっと「アンパンマン」の外見をカッコ悪いと捉えるのは、大人だけなのかもしれない。
(TechinsightJapan編集部 みやび)