声優の日高のり子がスタジオジブリのアニメ「となりのトトロ」の「サツキ」役を決める声優オーディションを受けた時のことだ。先輩声優の島本須美も同じ役柄で受けていたことを後に知り焦ってしまった。
スタジオジブリ作品の声優はプロの声優にとっても憧れなのだ。アニメ「タッチ」で浅倉南役として知られる日高のり子もその1人だった。彼女は1988年に公開された「となりのトトロ」で主演の「サツキ」役を決めるオーディションに見事合格して念願を叶えたのである。9月6日に放送された「超豪華!!スタア同窓会」に出演した彼女はその時の心境を語ってくれた。
日高のり子は「オーディションに受かって凄く嬉しかった」と喜びもつかの間、すぐにリハーサル用の画をもらった。あの「となりのトトロ」の森や田園、青空が美しいジブリならではの画である。「凄くキレイで自分の声で足引っ張ったらどうしようって緊張した」と彼女は身が引き締まったことを思い出していた。
この日、先輩声優の島本須美も出演していた。彼女は同じ「となりのトトロ」でサツキの母親、ヤス子役を務めた経歴が紹介された。すると島本須美が「本当はサツキの役でオーディション受けたの」と明かした。その瞬間、日高のり子が頭を抱えて「怖~い!」と悲鳴をあげたのだ(浅倉南の声だった)。そして彼女は「聞かなくて良かった。オーディション前に聞いてたら凄い緊張していたと思う」と真顔で話したのである。
島本須美はジブリ声優としても先輩で「風の谷のナウシカ」のナウシカ役をはじめ数作品に出演している。彼女は1979年に『ゼンダマン』で声優デビューして以来、「めぞん一刻」の管理人さん、音無響子や「それいけ!アンパンマン」のしょくぱんまんなど様々な役を演じているのだ。子役やアイドルを経て、1984年に「超時空騎団サザンクロス」のムジカ・ノヴァ役で声優界に入った日高のり子にとってはまさに憧れの存在だった。と同時に強力なライバルであり、声優オーディションの最終選考でいつも彼女が落ちて島本が合格していた。日高は「オーディションで会うと諦めていた」と島本について語ったこともあるのだ。
それだけに「となりのトトロ」のサツキ役を島本が受けていたことを知らされた時は、冷や汗が出たのではないだろうか。もし、知っていたら「諦めていた」かもしれないのだから。もしかしたら先輩の島本が、そんな彼女に会わないように配慮してくれたのかもしれない。
(TechinsightJapan編集部 真紀和泉)