今月2日、高雄市で通報を受けて駆けつけた救急車が、別の患者を通報のあった患者だと勘違いし、病院へ搬送していたことがわかった。搬送が遅れた患者は脳内出血がひどく、3日間意識不明の状態が続いた後、死亡した。
亡くなったのは高雄市海光四村眷村に住む83歳の男性。台所で転んだ拍子に床に頭をぶつけて倒れた。すぐに気付いた妻が隣人に助けを求め、隣人が110番通報した。
数分で駐在所の警官が駆けつけ、119番通報。通報から2分で村の入り口に到着した救急車だったが、突然一人の男性が立ちはだかり、頭痛と息苦しさを訴えた。隊員は男性に、「通報したのはあなたですか?」と尋ね、住所の確認を行ったところ、男性が「はい」と答えたので病院へ搬送したという。
そのころ、なかなか来ない救急車にしびれを切らした警官が消防局に連絡したため、消防局は救急車が患者を乗せ間違えたことに気付いた。すぐに2台目の救急車を出動させて男性を搬送したが、1台目からは20分以上遅れての搬送となった。
亡くなった男性の家族は、「もっと早く到着していれば・・・」と、消防局に重大な過失があったと訴えている。これに対し、高雄市消防局は隊員が2度口頭確認を行っていることから、故意に通報者を名乗った男性に非があるという見解を示した。
しかし、通報者を名乗った男性によれば、この日は体調が悪かったため友人に119番通報を頼み、救急車が来たのを見て、自分を乗せに来たのだと思ったそうだ。隊員の確認については、通報しているのでもちろん「はい」と答え、住所はよく聞こえなかったので答えなかったとしており、この点が消防局の発言と矛盾している。
通常119番では、通報者の名前や患者の性別、年齢、状態を可能な限り詳しく聞くという。そして、現場に到着した隊員はセンターと連絡を取りながら、情報に間違いがないことを確認してから患者を搬送する。それがなぜ、これほどまでに曖昧な確認で済まされたのだろうか。消防局に非がなかったとは言いがたい。
(TechinsightJapan編集部 片倉愛)