writer : testjournalist

【ドラマの女王】女子の嫉妬は無限ループ。誰も杏を助けない。『名前をなくした女神』。

今日21日に最終回を迎える『名前をなくした女神』(フジテレビ系)が、ここにきてますます着地点が見えなくなって来た。

秋山侑子()は理解ある夫のおかげで出産後仕事も続けていた。しかし、マンション購入直後に地方へ転勤を打診され会社を辞める。引っ越しを機に息子・健太(藤本哉汰)を通わせることにした幼稚園で安野ちひろ(尾野真千子)、進藤真央(倉科カナ)、沢田利華子(りょう)、本宮レイナ(木村佳乃)と出会う。しかし、最初に仲良くなった雅美(安達祐実)に「しょせんママ友」と釘を刺される。数日後、雅美は自殺未遂騒動を起こし、九州へ引っ越してしまった。侑子はちひろたちとお受験をすることを決める。そこから、ママ友から侑子への総攻撃が始まる。

まずタイトルを見て、主婦が子どもを産むと「○○くんママ」や「□□さんの奥さん」など自分の名前で呼ばれなくなり、個人として見られない空虚感を持つと聞いたことを思い出した。そのため、このドラマもそのような主婦が自分を取り戻す話だと思っていた。しかし蓋を開けてみれば、そんな生易しい内容ではなかった。毎回毎回ただただ怖いのだ。背筋がぞっとする人間の怖さで埋め尽くされた60分にギブアップしそうになるほどだ。

女の嫉妬や妬みを前クールの『美しい隣人』とは違う角度から描いている。女性なら誰もが一度は学生時代に経験しているのではないだろうか。そんな中高生時代によく見た景色がそのまま再現されている。仲良くしているのに、ほんの些細なことが嫉妬に変わる。成績や異性からの評判…そんなことで?と思うようなことでも、自分が少しでも劣っていることを見せつけられれば、それは憎しみに変わるのだ。どんなに仲がよくても。いや、仲がいい程その嫉妬は燃え上がるのかもしれない。そしてそれは学生時代だけの話ではないと、このドラマは我々にひしひしと教えるのだ。

主人公の侑子は何もかもが順風満帆だ。理解のある夫。夫婦間でも名前で呼び合っている。ママ友たちが持っていないものを全て持っている。加えて、正義感が強く真っ直ぐな人間である。それゆえに他人の見栄やプライドが見えていない。そのため、相手の癇に障ることを度々口にしてしまう。見ているこちらからすれば「あぁ、言っちゃった」と救いようのないようなことばかりだ。普通、主人公がいじめられたら、感情移入するはずなのだが、なぜか侑子にはその気持ちが湧かないのだ。「それは憎まれるよ」と思ってしまう。いじめられている子を教室の隅で傍観している感覚だ。

ドラマでは、いじめに追い込まれて自殺未遂、誘拐未遂、嘘の噂、人の受験願書を捨てるなど、少し度を超えてはいないかと思うようなことが多々ある。しかし、実際に数年前ママ同士のいざこざが原因で起きた事件が報道されたことを考えれば、そう楽観視していられないのかもしれない。女の憎しみは小さなものが蓄積され、溜まりに溜まったものが爆発するのだから。しかも、何が起爆剤になるのかは全くわからないのだ。それを象徴しているのが、りょう扮する利華子だ。彼女は一匹狼気質で侑子が現れるまでママ友の輪に入ろうとしなかった。みんなが「健太くんママ」と呼ぶ中、彼女だけは「侑子さん」と名前で呼び合うなど、ずっと侑子の味方だった。しかし、この終盤にきてその利華子の蓄積していた嫉妬が爆発した。夫・圭(KEIJI)に浮気されていても余裕な振りをしていた利華子だったが、侑子親子の仲の良さを目の当たりにする度に表情を曇らせていた。それが、圭から離婚話を持ちかけられて爆発した。このように直接、侑子が下した原因など一度もないのだ。ただ、何をしても上手くこなしてしまう侑子への勝手な嫉妬だけで、みんな侑子を攻撃している。そうすることで自分たちのプライドを保つのだ。

そんな女たちの嫉妬劇は最後の戦場であるお受験を終えたとき、一体何を得るのだろうか。タイトルに入れたわりには上手く使えていない設定の一つである「名前」を取り戻すのだろうか。おそらく最後も抜かりなく怖いことばかりだろう。そのあたりはしっかり見届けたい。ただ、昨日まであんなに不仲だったのに、次の日には何事もなかったかのようになかよしに戻っているのも女である。どちらに転んでも第三者からすれば怖いことに変わりない。
(TechinsightJapan編集部 洋梨りんご)