市販のスポーツドリンクや果汁、インスタント飲料などから、食品への使用が禁止されている可塑剤「DEHP(フタル酸ビス2-エチルヘキシル)」が検出されていたことが、衛生署の発表によりわかった。これまでに約60万本の飲料、2万キロあまりのジャムや果汁パウダーなどが回収されている。
人体に有害なDEHPが混入する製品が確認されたのは、46の製造及び卸し売り工場。悦氏、サンキスト、Taiwan Yesなどの有名ブランドの製品も含まれている。その後の調べにより、新北市の昱伸香料公司が5年前から乳化剤にDEHPを混ぜていたことが判明。約30社がこの乳化剤を使用しており、飲料だけでなく、ゼリーやジャムなどDEHPが含まれる製品は数十種類にのぼる。さらに問題の製品はフィリピンやベトナム、上海にも供給されているという。
「DEHP」とはポリ塩化ビニルの製造などによく使われる可塑剤である。食品に使われるはずのない可塑剤がなぜ乳化剤として使われたのか。
台湾師範大学化学科の教授はこう話す。「ドリンク1本を25元とすると、乳化剤にかかる原価は0.25元。これをDEHPで代用した場合、その原価は0.02元に抑えられる」のだそうだ。
また、ある臨床毒物科の医師によれば、DEHPは数ある可塑剤の中でも最も毒性の高い物質であり、生殖系統異常や肝臓がんを引き起こす可能性があるという。さらに医師は「これはおそらく世界で初めて食品にDEHPが混入されたケース。悪徳度は中国の毒入りミルクに匹敵する」と話し、「台湾版メラミン事件」と称した。
消費者の健康を顧みないコストダウン。これは日本で起きたユッケ事件にも当てはまろう。これまで安全だと思っていたものが、突然そうではないとわかる。これは非常に恐ろしいことである。しかし、民衆の反応は「しばらくスポーツ飲料は飲まない」「水を飲むようにする」など意外と冷静だ。
(TechinsightJapan編集部 片倉愛)