不注意で糞を踏んで「ウンがついた」などと喜べる大物はなかなかいまい。鳥の糞ならまだしも、犬の糞など踏んだ日には、もうどこにも行けない。残念ながら台湾には野良犬が実に多く、糞を踏まないためには下を向いて歩かなければならない。それはそれで大問題なのだが、今回問題となっているのは犬の糞ではなく、野良犬が付近の住民や犬たちを襲うというものだ。試行錯誤を重ねた動物救援隊が新たに打ち出した撃退法は「トラの糞」だという。
台北市北投区にある東華公園の登山歩道は、付近の住民がよくペットと一緒に散歩コースとして利用している。しかし、公園内には20数匹の野良犬が集まっており、住民たちに襲い掛かる事件が相次いでいる。東華里長の話では、住民から野良犬についての通報が週に2、3件あり、中には野良猫がお腹を噛み千切られたというものもあったという。
これまで何度も捕獲に失敗してきた動物救援隊が思いついた「トラの糞作戦」とは、鼻を突くような猛獣の糞の臭いで、野良犬を追い払おうというものだ。実際に、訓練されたオオカミ4頭にその臭いを嗅がせたところ、顔色が変わり、揃って後ずさりしたという。公園には、散歩に訪れる人たちに害がないよう、また、大雨に流されることがないよう、糞を土や木の枝と混ぜて臭いを薄めてから撒かれる。木の根元に置いたり、幹にこすりつけるなどして3週間様子をみる。
さて、この一風変わった撃退法を専門家はどう見ているのか。台湾大学獣医学教授は、犬がトラの糞を怖がったり、猛獣の糞を嗅ぎ分ける能力があるということなどは聞いたことがないと話す。また、新竹市立動物園長は、動物にはテリトリー性があるため、違う臭いを嗅げば警戒すると話し、純肉食動物の糞ならば強く、鼻を突く臭いが一時的な撃退効果をもたらすことが考えられるという。今回、トラの糞を提供した台北市立動物園は、今後も必要であれば協力する考えを示しているが、その効果についてはやはり一時的なものと見ている。
台湾の野良犬問題は、大学のキャンパスをたくさんの野良犬が徘徊するなど深刻である。これは管理が緩いわけではなく、おそらく数が多すぎるからに違いない。その背景には、無責任な飼い主もさることながら、野良犬たちが育ちやすい環境も挙げられよう。あちこちに屋台が並ぶ台湾では、あちこちに生ゴミ、すなわち彼らの食料が存在するのだ。一時的な撃退などでは到底太刀打ちできない、社会的に対策を講じていかなければならない問題なのである。
(TechinsightJapan編集部 片倉愛)