雇用が冷え込む中、公務員の悪口を言いつつも、就職先として公務員を希望する人は減る気配はない。
しかし、本連載でたびたび指摘のとおり、現在問題となっている天下りは広範な意味での人事の一環なので、これが規制されることで、今、お役所では大変な人事の停滞が起きているようだ。
天下りが規制されることで、いわゆる早期退職者が少なくなり、定年まで勤め上げたいという人が増える。
そうなると、役職ポストは上になるほど少なくなるから、これまでは、たとえば課長職を6年やったら、部長に昇進する人が2割、次長止まりの人が3割で、残りは課長職を最後に民間企業に天下りというのがパターンであった。
しかし、いつまでたっても上が退職しないので、課長職を10年以上もやり続ける人が出始める。
これが係長、主査職となるとさらに悲惨だ。
昇進と同時に僻地の係長を5年、地方都市の係長を7年となり、地元に戻ってこれるのは12年後という、これまでには考えられない悪夢のような人事が待っている。
独身者ならばそれほど影響はないだろうが、既婚者だと子どもが5歳のときに昇進で僻地勤務となったら、地元に戻る頃には子どもが17歳になっているということだ。
これは子女の教育や老親の介護を考えると、かなりの負担となるので、いきおい昇進拒否者が増加し出す。
つまり、これから公務員になろうとする人は、自分には縁もゆかりもない土地への繁忙転勤を20年以上繰り返して昇進するか、一生ヒラで終わるかの二択になる。
「仕事があるだけまだマシだろう」と思うかもしれないが、公務員の高給はこの転勤による精神的・経済的負担が織り込み済みなのだ。
公務員を志望する人は、それぞれの公務員試験資格に応じた平均的なキャリアマップと生涯年収をよく計算して、どちらの人生を選ぶかよく考えておいたほうがよいだろう。
(TechinsightJapan編集部 石桁寛二)