writer : techinsight

【親方日の丸な人々】(天下り列伝)独立開業系の天下り

天下りというと、なにやら公務員の組織的犯罪のような言われようをされる昨今であるが、天下りは本連載をはじめ、多くの人が指摘するように官庁人事の一環として行われるものである。人事は、単なる「駒動かし」から、広範な研修体制とキャリアマップの提示までを含むが、世間的にはあまり非難されないのに、役所内からはあまり良い目で見られない天下りがある。
それは独立開業系の天下りである。

たとえば、財務省/国税庁職員の中には、早期退職して税理士として独立開業の道を選んでいるケースがある。

国税庁では「税務大学校」という大規模な教育施設を備えており、ここで体系的な教育を施せば、難関と言われる税理士試験のパスは難しくない。

技官を多く抱える国土交通省や農林水産省では、一級土木建築施工管理技士から技術士まで、技術系の資格を取得した上で、企業の顧問として就任したり、独立事務所を開業したりする人がいる。

その他、司法事務や許認可事務に一定期間従事した職員に、試験免除の特権が与えられる、司法書士や行政書士など、さまざまな独立開業の道がある。

これまで、役所の出世街道の基本は、ノンキャリアの場合、下積みから定期的昇進を繰り返して管理職となり、そのまま民間企業への天下り(退職後2年間は利害関係のある企業には就職できないが)をするというものであった。

役所的には、勧奨退職ということで退職金も上積みされるし、天下り後もこれといって仕事もなく、役所の後輩たちに名刺配りをしながら、ニラミをきかせていればよかった。

それに対して、独立開業系の天下りは、タイミングを誤ると自己都合退職ということになって、退職金も増えないし、生涯収入を考えると、独立は出世街道から外れた者のやることだと見られていたフシがある。

しかし、今後、天下りに対する規制は厳しくなる一方であり、役所の仕事受注が一般競争入札で行われる現在、むしろ独立開業系の天下りこそ、推奨すべきであろう。

かつて難関とされてきた業務独占系資格は、試験にパスすることよりも、パスした後の研修や実習に重点を置くようにシフトしてきている。

あとは、各資格を規定する法律の改正により、一定期間、官庁の専門業務に従事した者の試験免除措置を進めるなど、入口を広くして、出口をしっかり整備すれば、効率的な人事が可能になるだろう。

最大の問題は、「独立開業して食べていけるかどうか」という不安である。

民間企業の人間であれば多くが経験している、地道な開拓営業という経験がまるでない公務員が、独立開業してもやっていけるよう、サポートする体制も必要になると思われる。
(TechinsightJapan編集部 石桁寛二)