エンタがビタミン

writer : techinsight

【エンタがビタミン♪】夢破れ、帰郷した息子に母は…。あの有名ヒット曲が誕生したきっかけ。

11月23日放送の「解禁!マル秘ストーリー」で、海援隊の有名なヒット曲『母に捧げるバラード』の知られざるストーリーが明かされた。

4分間の曲の中で、メロディの付いた歌詞はたったの3行。あとは全て武田鉄矢の語りが続く、他に類を見ない構想で大ヒットを記録した『母に捧げるバラード』の裏には、海援隊の苦悩と哀しみがあったという。
チューリップや井上陽水など、名だたる歌手たちを世に送り出した福岡の伝説のライブハウスで、海援隊も経験を積んだ。その後に念願の東京進出を果たしメジャーデビューするが、リリースした曲はどれも売れず、プロデューサーからも「もうちょっとやってみて売れなかったら、帰ったほうがいいよ」と言われていたという。

東京に居場所が見つけられず、武田の足は自然と故郷の母のもとへ。そんな武田を見た母は、コップにお酒をなみなみと注ぎ、「乾杯しよう!」と言った。「乾杯するようなめでたいこと、なんもない」と言う武田に「苦しい時にへらへら笑っとるから、人生覚悟ができるけん」と、沈む息子を励まし続けた。
その言葉はまさに、武田が憧れ続けたフォークソングの歌詞のようで、そのとき武田は「この母を歌にしよう」と思い立ったのだ。

ある日、福岡の伝説のライブハウスで、チューリップなどが集まるライブが行われることとなり、地元出身ということで海援隊にもお呼びがかかった。ここで観客に受け入れられれば、ヒットへの道のりが開ける!と気合を入れてステージに立った海援隊。しかし、まさかの大ブーイングの嵐を浴びることとなった。「引っ込め!」「早くチューリップを出せ!」口々に叫ぶ観客。その野次の真ん中に立ち、思わず涙してしまいそうになった武田の口から、ぽろりとあのフレーズがこぼれ落ちた。
「お母さん 今僕は思っています。僕に故郷なんか、なくなってしまったんじゃないかと。そして、ひとつ残っている故郷があるとすればお母さん、それはあなた自身です。あなたは、何から何まで故郷そのものです。」
それは、武田の母に対する想いそのもの。その真っ直ぐであたたかいメッセージに、野次を飛ばし騒いでいた観客の心は惹きつけられた。いつの間にか騒ぎは収まり、みんなじっと耳を傾けている。武田からは、一番前で涙する学生の姿が見えた。『母に捧げるバラード』が、誕生した瞬間だった。

いつの時代も、子を想う親の心は素晴らしい。そして同様に、親を想う子の心も。互いに命を奪ってしまうニュースがあとを絶たない昨今、海援隊のメッセージをもう一度噛み締めてもらいたいと強く願う。
(TechinsightJapan編集部 畑中 栄美)