広州アジア競技大会で17日に行われたテコンドー女子49キロ級1回戦で、金メダル候補とされていた台湾の楊淑君選手(25歳)が「不正があった」として失格になった。この事態を受けて、台湾では“韓国製品は買わない”“韓国には行かない”など反韓感情が高まっている。
何が起こるか分からないのが勝負の世界。金メダル候補の選手が負けて国民ががっかりすることはあっても、ここまで怒ることはない。仮に不正があったとして、それが誰から見ても明らかならば、諦めもつくし、選手への批判も出ることだろう。しかし今回、台湾各地で韓国製品ボイコット運動が始まるに至ったのは、この判定に疑わしい点があるからだ。
今回の不正判定については、世界テコンドー連盟の梁振錫秘書長(韓国)が会見に応じているが、17日に発言してから、毎日コロコロと発言が変わり矛盾が生じている。
楊選手が失格とされた経緯はこうだ。試合当日午前10時半ごろ装備の一次チェックを受けた際、もともと着けていた新型の電子防具の感度が悪いと指摘され旧型の電子防具に付け替え検査を通った。試合直前、審判による二次チェックも合格。感度テストでも問題はなく、全てが規定どおりに試合は始まった。ところが、試合開始後1分48秒。9対0の大幅リードで楊選手の勝利確実と思われたその時、大会技術員が裁判長に試合の中断を指示。楊選手にかかとのセンサーを剥がすよう要求。検査のため試合を一時中断。楊選手の電子防具の検査結果が出ると、「感度増強」効果が見られ規格外の防具であるとして、「失格判定」を下した。
この判定について17日の会見での梁振錫秘書長の発言は、「2007年以降足に装着する電子防具の旧型製品の使用とセンサーの貼り付けは認められていない」というもので、チェック時にかかとにセンサーが貼られていたかどうかについては「プライバシー保護のためコメントしない」としていた。ところが、18日の会見では、「旧型製品が使用禁止とは言っていない」「電子防具に問題はない」と発言を変え、「問題はセンサーを貼る位置を間違えたことにある」とした。さらに、楊選手はチェックの際、センサーを貼っておらず、チェックが終わってから貼ったのだという。そして19日、「旧型の電子防具のセンサーは部位に関わらず貼り付けてはいけない」とまた発言を変えた。
しかし、問題のセンサーについて、楊選手ら中華チームの主張は“チェックの際には着けていたが、きちんと確認を受けてから出場した。試合の際には貼らなかった”と、全く異なる。
この中華チームの主張に対して、梁振錫秘書長は19日、楊選手は試合の前にセンサーを剥がしていたが、不正の意図があったと判断し失格にしたのだと発言。もうメチャクチャではないか。試合の前に不正を発見したのなら、なぜその場で失格にしなかったのか。なぜ9対0のリード、残り12秒という瞬間まで待ったのか。梁振錫秘書長のコロコロ変わる発言に堪えきれず質疑を投げかけた台湾記者には、「翻訳ミスだろう」という信じられない回答が返ってきたという。
(TechinsightJapan編集部 片倉愛)