運命は時にとても残酷だ。先週木曜日、11歳の少年が警察の運転するバンに轢かれるという痛ましい事件が、パリ近郊のヴァル・ドアーズ県で起きた。横断歩道ではない所を車の通行を確認せず、横断しようとした子供の「つい、うっかり」が招いてしまった悪夢のニュースに、国民は心を痛めている。
横断歩道になっていないバス専用車線を横切ろうとした際、パトカーに轢かれたこの11歳の子供は、事故当時、ヘッドフォンをつけていて、パトカーのサイレンが聞こえなかったのだろうと思われる。少年は、頭を強く打ち、頭蓋骨に外傷を負っていて、脳内出血も起こしており、現在は意識不明の重体となっている。
そしてここで問題になるのは、警察側と目撃者側の事故の見解が食い違うということだ。警察側によると、事故当時、パトカーは青信号のところを、しかもランプを点灯させ、サイレンを鳴らしていたから、誰かが横切るなど全く予知できなかったと言うのに対して、数人の目撃者によると、パトカーは赤信号のところを突進してきて、サイレンを鳴らしてもいなかったというのである。さらに、パトカーは、当時、挙動不審だった3人を身元確認のために署へ移動中だったということで、道路が混んでいたわけでもなかったのに、一体なぜ、バス専用線を使って緊急移動しなければならなかったのか、腑に落ちない点が残る。本来そこはバス専用レーンで、まさか、そこをパトカーが通るとは誰も想像できなかったのではないだろうか。現在、真実を明らかにするために、検察が捜査に乗り出している。
ヘッドフォンだけでなく、携帯電話も道路での注意力を妨げる原因の1つである。車を運転する側だけが気をつけるのではなく、歩行者も道路の状況にもっと目を配り、お互いが気をつけるようにし、このような悲しい事故が二度と繰り返されることがないようにしたいものである。
(TechinsightJapan編集部 福山葉月)