公務員の天下りといえば、キャリア官僚が関連法人を渡り歩いて巨億の退職金を得ていることばかりクローズアップされているが、それは数にすれば天下りのほんの一握りである。圧倒的多数を占めるノンキャリアの天下りについては、あまり知られていないので、今回紹介したい。
ノンキャリア役人のうち、ある程度まで出世できた者は、おおむね50代半ばで勧奨退職の扱いを受ける。
要するに「肩たたき」であるが、きちんとその後の再就職先が保証されており、民間企業のように、単純労務工員などの低賃金再就職を世話されるようなことはない。
多くは、その役所から恒常的に仕事を受注している企業の総務部長や相談役といったポストが用意されている。
しかし、すぐにその地位に就くことはできない。退職後2年間は役所と関連の深い企業への再就職が禁止されているからだ。
よって、2年間は事務用品会社とか清掃会社など、お役所の利権に関係ない会社に仮就職して、後輩たちにひたすら名刺を配って歩く。
この2年間を「喪中」または「ミソギ」と呼ぶこともある。
そして、2年間の喪があけると、晴れて関連企業の総務部長や相談役に「転職」できる。
この「転職」こそが天下りなのであるが、公には「退職したOBが転職しただけなので役所は関知しません」という姿勢を貫かれる。
これで無事安泰かと思うが近年はそうでもなくなっている。
なにしろ、お役所の仕事受注は一般競争入札が基本になっているから、昔に比べてOBの「口利き」も効果が薄い。
仕事を取ってこれない天下り役人には、会社も冷たい。
お茶も入れてもらえない。朝出社して「おはようございます」と言ったきり、あてどなく役所回りをして帰社したあと、「お先に失礼します」と言って家に帰る。
そして、最近は天下りへの風当たりは極めて強く、役所の方でも自粛気味になってきているから、人事が停滞し、昇進のメリットも無くなってきている。
そういう状況をみている若手の役人は、最初から昇進など考えもせず、禄を食むことに汲々としているというのが、現在の天下り実態である。
よく言われることだが、天下りは人事の一環なのである。
天下りを禁止するのであれば、それに代わる多様なキャリアマップを描き、定年まで勤め上げる者もいれば、40代で民間に自力で転身できる人材もいるといった状況を創りだすことが肝要であろう。
(TechinsightJapan編集部 石桁寛二)