ここ10年ほどの公務員バッシングブームにより、わざわざお役所にやってきて論説を披露する人が増えているようだ。
こうした人々は昔から存在するので、お役所では、それぞれのタイプ別に対処法は揃っている。
そこで今回は正しくお役所にクレームをつけるときの反面教師として、こうした「お役所訪問者」のタイプ別列伝を紹介したい。
「お役所訪問者」の代表的なタイプは、次のとおりである。
なお、名前はわかりやすくするために記者が付けたものであり、本当にお役所でそう呼ばれているわけではないので、誤解の無いようお願いしたい。
○ザ・論説委員
要するに一家言を有する人である。
有意義な提言や苦言ならば、市民の声として、それを聞く窓口は用意されているのだが、なぜか部長、局長といった幹部職に直談判をしたがる傾向がある。
対応にあたった職員は、「市民の声窓口」へ案内しようとするのだが、「そんな三下では話にならん」と言って聞かない。
こうした人には、「話の趣旨は局長に伝えるから」と言ってなだめるか、「局長は会議中」などと言ってお引き取り願うことになる。
○ザ・マイレボリューション
ザ・論説委員と似ているが、一家言のようなものはなく、単に反体制を生き甲斐としている人である。
1960年代~70年代であればデモに行くとか、集会に行くとかいう方法があったのだが、既にそうした組織から離れているし、時代の空気ともマッチしないので、お役所に反抗しに行くというタイプである。
話し方は割合に冷静であるが、独特の挑発的な語り口なので、ザ・論説委員とは区別が付く。
○ザ・郷土愛士
これもザ・論説委員と似ているが、地元に長く住む人で、歴史的に仲が悪い隣町が二車線道路になったのに、うちの町は一車線しかないのはけしからんといった発想をする人である。
複数市町村をまたがる都道府県道の道路計画は、交通量調査などに基づき策定されるものであり、必ずしも全てが同じ車線数である必要はないのだが、こうした事情はザ・郷土愛士には通じない。
○ザ・感激紳士
ザ・郷土愛士と同じく郷土愛に満ちた人なのだが、いわゆるハコモノ行政として批判されがちな、立派な市民生活センターの類ができたことに深く感激し、御礼の言葉を述べに来る人が、まれにだが存在する。
お役人にとって、感謝されるのは嬉しいが、もしかするとハコモノ行政への批判を込めた褒め殺しに来たのではないかと思って、警戒されることが多い。
お役所を訪問して意見を述べること自体は、何も問題はないが、内容によって、苦情処理窓口、行政相談、個別窓口などを使い分け、案件によっては政治家を通すなどの交通整理を行うことが推奨される。
なお、お役所にとって最も嫌な来客は、ほかならぬ「天下りした元公務員=OB」である。元上司は退職しても「偉い人」であり続けるからだ。
(TechinsightJapan編集部 石桁寛二)