writer : techinsight

【親方日の丸な人々】検察証拠改ざん疑惑と2012年度予算要求のネタ

現在、マスメディアを賑わしている、郵便不正捜査に関わる検察側の証拠改ざん疑惑は、実はマスメディア自身の問題でもあり、全省庁的な公文書管理体制の問題でもある。
公判開始前にマスメディアが逐次情報開示によって作り上げる「空気」に、世論が惑わされることのないよう、本記事を執筆している記者自身も含めてだが、広く自戒する必要がある。

ところで、今回の疑惑の”どんでん返し”に関して、2012年度(再来年)の予算要求にぜひ盛り込むべき事項がある。それがIT用語でいう文書管理ソリューションとデジタル・フォレンジックである。

もともとお役所においては「原本性の確保」という基本が堅く確立されていた。

ITが普及する前には、ひとつの公文書の原本は、世界で1枚しか存在してはならず、それをコピーした書類には「原本謄写」という証明印を捺して使用したのである。

原本を確定するための起案以前に推敲されたり、破棄された文書は、全て存在しないものとして扱われていた。

しかし、行政情報化とほぼ同時に施行された行政情報公開法では、それら途中文書やメモ、さらにワープロ文書ファイル(確定に至るまでのバージョンも含む)や電子メールも含めて、全て公開の対象となった。

この頃から、行政文書の管理と電子化された情報に対する原本性の確保が逆にずさんになっていったのである。

まして、犯罪捜査の証拠書類となれば、ありとあらゆる「非オーソライズ文書」が対象となる。

簡単にいえば、電子的に管理されるべき文書が、アナログ的に管理されているために、今回の報道が事実ならば、フロッピーディスクに保存された文書の日付プロパティを改ざんすることで、事実の前後関係を偽装することに成功したということである。

そこで導入すべきなのが、文書管理ソリューション及びデジタル・フォレンジックである。

非常に広範な技術の総称なので、解説は専門サイトを参照いただきたいが、パソコンの操作記録のログや、ストレージに残る電子文書を全て系統立てて整理し、作成者の特定と、原本性を証明できるようにすることである。

またプリントアウトされた書類には、全て「電子透かし技術」を導入し、電子文書との一対一の照合を可能にする必要もあるだろう。

こうした技術の導入は、単に犯罪捜査や内部監査のためだけではなく、情報漏洩防止の効果もあるため、投資しただけの効果は十分にある。予算要求の理由も成り立つであろう。

文書管理ソリューションは、政策推進のため戦略的に用いることも可能だ。

お役所には公文書だけではなく、一般国民の個人情報も多く管理されている。
そして日付プロパティの改ざんのような単純な犯罪なら、コンピュータウイルスでも実行可能であるだけに、知らぬ間に一般国民が何かの事件に巻き込まれる可能性もある。

主任検事の取り調べは現時点で進捗中であって事実関係はまだ全容が解明されていないが、デジタル・フォレンジックをはじめとしたセキュリティ分野の投資については、検討を始めてもよいと思われる。
(TechinsightJapan編集部 石桁寛二)