昨年の政権交代と事業仕分けで真っ先にやり玉に挙がったのは、治水事業を巡るダム建設と流域治水事業の非連携がもたらす「ムダなダム」であった。しかし、この同一事業内部の非連携がもたらすムダな公共用物はほかにもある。渋滞緩和のために建設された無数のバイパス道路である。
実は、記者はとある地方都市を車で移動中、信じがたいバイパス道路を発見したので紹介する。
A市からB市まで移動するために、もっとも速く経済的なのは高速道路を使うことである。
インターチェンジに入るべく一般道を移動中に、「B市はこちら」と書かれた標識を見たので、この道路を通ればインターチェンジへ着くものだと思い込んで、そちらを走行した。
しかし、いつまでたってもインターチェンジに着かないので、コンビニに立ち寄って道を尋ねた。(カーナビを搭載していないので訊くしかなかったのである。)
すると、その道路は驚くなかれ、インターチェンジを迂回するように建設されていたのである。一般道のバイパスだったのだ。
それならそれで、道路分岐点の行き先標識で「インターチェンジはこちら」と明示すべきなのだが、書かれていなかったので、勘違いしたのである。
決して、高速道路が出来る前からあったバイパスではない。すでに高速道路が開通してから建設されたものである。
要するに、高速道路、国道一般道、地方道がほとんど連携しないままバラバラに道路計画が立てられ、一度立てられた計画は、その後の事情がどう変わろうと見直さずに建設してしまうため、このような珍妙な道路が出来上がる。
もちろん、存在理由が全くないわけではない。地方道は生活道路であり、国道や高速道路は都市間移動道路であるから、役割が違うとも言える。
しかし、実態はそれぞれの利権を守るための、予算というパイの分け合いがもたらした、贅沢な道路にほかならない。
そして、これは治水事業でも言えることなのだが、「利権の独り占めは認めない。それぞれ平等に権限を持つ」という、お役所内綱引きの結果、ムダな公共事業が重複して行われることになる。
投資対効果をしっかり計算した道路計画、河川計画のグランドデザインは、政治主導で行い、事業仕分け等を通して国民の世論(必ずしもマスコミの誘導世論だけではない)というフィルターを通しながら監視していくことが求められよう。
特に地方道には、都市計画をにらんだ「地域振興道路」とでも呼ぶような、冗長な道路が多数あるので、どこかの地方都市に行った際には、「よそ者の目」でチェックしてみるのも良いであろう。
(TechinsightJapan編集部 石桁寛二)