writer : techinsight

【親方日の丸な人々】業界丸投げのIT施策提言

現在、総務省が主導して2015年までにIT関連予算及び需要喚起の飛躍的な増大を目指しているが、そこに書かれている内容は、すでに業界が旬の売りモノとして宣伝しているものばかりである。明らかに業界丸投げで作り上げた計画であるが、肝心なことが数点忘れられているようなので、今回はそれを紹介する。

遡ること1年半前に、世界同時不況を受けた緊急提言としてICTビジョン懇談会は8つの提言を行っている

現在100兆円規模のIT需要を2015年までに倍増させるとは、なんとも鼻息が荒いことだが、その具体策はサーバー統合、システム統合、そしてあろうことかマスター統合までが視野に入っている。

マスター統合というのは、各省各庁が人事データベース、給与データベースを中核とした関連データベースをバラバラに持っているのを、一つに統合しようとするものだ。

これが実に労多くして功少なしなのである。
このようなプロジェクトを真面目にやろうとする人間は、よほどおめでたい素人か、よほどプロ意識の高い一流のITマンである。後者がそのようなプロジェクトに就くことはないから、やはり毎度のことで単にパソコンの得意な人間を担当に就かせてあとはお任せ状態になるだろう。
そうしたプロジェクトはたいてい失敗する。

システム統合については、既存システム資産の棚卸しが膨大な作業量になる。そして自治体まで視野に入れた場合には、現在のIT主流から見てとんでもないものが発掘されてくるであろう。

レガシー・アーキテクチャーで動作している幾多のシステムの仕様を抽出して、流行のSaaSに落とし込むには、気の遠くなるような作業が待っている。

省庁内LAN及び省庁間WANについては、統合に当たってネットワークトポロジーの最適化や回線幅の増強などが求められるが、これについては一切触れられていない。

そして最大の問題はコスト試算が一切行われていないことである。親方日の丸の得意技で費用対効果度外視のプロジェクトである。

本来なら、システム統合に当たって、組織の統廃合も行い、余剰人員を削減して人件費を減らすべきなのだが、身分保障のあるお役人を簡単に削減できない。

となれば、より市民に密着した行政サービスに従事させるよう人事を行うべきであろう。

つい先日、死亡した老人の老齢年金不正受給が明るみに出て問題になっていたが、現況届による形式的確認ではなく、福祉の一環として実際に自宅を訪問して、生存確認を行うスタッフを増やすなどの柔軟な行政サービスを実施すべきである。

真に国民のためになるITを目指して、2015年を目指して欲しいものである。
(TechinsightJapan編集部 石桁寛二)