エイズ大国といわれる中国で、HIV感染者の人権が侵害されている。河南省で、輸血によってHIVに感染した男性が、17日、突然現地当局に軟禁される事件が起きた。更に、19日には軟禁場所から連れ出され、その後行方が分からなくなっているという。
多くの住民がHIVウイルスの感染に苦しむ中国河南省。貧困に苦しむ人々が、お金を得るために、ずさんな管理の下で行われる売血に走ったことが原因だといわれている。当局に軟禁された男性も、その河南省で生まれた。9歳の時、病気のために病院でうけた輸血が原因でHIVウイルス、B型肝炎及びC型肝炎に感染したという。その後、順調に北京で大学を卒業するも、病気のために仕事の機会が得られず、昨年卒業してからはHIV感染者の支援活動に身を投じていた。
しかし、河南当局が17日、7、8人の警察官を派遣し、男性は「治療」という名目で強制的に連れ去られ、河南省新蔡県にある第二人民病院内に軟禁された。その2日後、男性は再びどこかへ連れ去られ、携帯も通じなくなったという。
中国HIV感染者の支援活動を行っている「北京愛知行研究所」は政府に対し、この男性の自由を求める声明を発表している。声明の中では、この男性が常に「穏控対象(厳重な監督が必要)」リストに載せられていたことを示す現地政府の資料が公表されている。なお、これまでに、現地当局からは何の回答も得られていない。
中国政府は今年4月末、HIVに感染した外国人に対する入国拒否を撤廃する声明を発表し、HIVへの理解をアピールしたばかりである。しかし、まだまだその差別意識は高いといえよう。衛生部によれば、HIV教育は地方の学校や団体、小さな村など中国全土に拡大しているという。感染しやすい層への教育は大事だが、他にも教育すべきところがあるのではないか。差別と闘う政策こそが、新たな感染を防ぐ有効な手段なのだから。
(TechinsightJapan編集部 片倉愛)