選挙が終わり、まもなく2011年度予算概算要求のシーズンとなる。昨年は一度固まった概算要求を反故にして組み直した上に、事業仕分けが行われ、一方でシーリング(要求上限)を設けなかったので、結果的に膨大な予算になってしまった。
今年はシーリングを設けた上で、事業仕分けによる査定を経て、健全な予算編成をしてほしいものである。
そんな中、ぜひ徹底仕分けをするべき事業がある。庁舎/官舎新改築事業、いわゆる営繕事業である。
庁舎の必要面積は、役職に応じた執務スペース基準が定められ、それに応じて机や椅子のグレードも決定され、全体面積が決まる。
しかし、10年前と決定的に異なる要因がある。定員減少による人数減とペーパーレス化による書類置き場のスペース減少である。
もし、どこかの役所を訪れて書類や書籍が山と積まれているのを見たならば、それはIT化にもかかわらず、ペーパーレス推進をする気がないものとして批判するべきである。
電子決裁も普及し、書誌登録もITシステムで行われるのがデフォルトになっている現在、執務スペースは従来の2/3程度で済むはずである。
もちろん、コピー機やプリンターの設置スペースも削減できる。
机を中心とした職員一人当たりの執務スペースもそれに応じてワンランク下げて問題ない上に、人員も減少しているから、悠々たる執務スペースが確保できるはずなのだ。
こうした状況において、庁舎新改築の必要性はほとんど無いと言ってよいだろう。既存庁舎の遊休スペース利用と、間仕切り直しで対処し、はみ出した部署は、近傍のオフィスフロア借り上げで補えばよい。
むしろ、国の機関と地方の機関にまたがって処理するべき業務は、同一庁舎内の近傍に執務スペースを構え、来庁者の利便を向上させるべきである。
身近なところで、国税・地方税の税収別窓口を備えた統合税務センターのような施設こそ交通の便の良いところに設置したほうがよいだろう。
こうした措置が図られないのは、ひとえに国土交通省の建築系技官の仕事を確保し建築業界の利権を確保するためである。
また、「執務室狭隘」を理由に職場要求を出したがる官公労の性癖も関係している。
単なる老朽化や耐震構造基準を理由とした、庁舎の安易な新改築は厳しく事業仕分けの対象にしてほしいものである。
(TechinsightJapan編集部 石桁寛二)