アントニオ猪木のものまね芸人といえば、最近ではアントキの猪木、そしてアントニオ小猪木などが活躍するが、なんといっても元祖は春一番だ。なにしろ彼は唯一、アントニオ猪木がものまねを公認している芸人なのである。そんな春一番は、5年前に重病にかかり生死の淵をさまよう状態にあった。その彼を奇跡的に復活させたのがほかならぬアントニオ猪木その人だったのだ。
このエピソードは7月に某高校で講演会を行った、進路アドバイザーの久保森住光氏によって語られた体験談である。
久保氏は学生時代からプロレスの大ファンでアントニオ猪木が現役時には、かなりの頻度で観戦していた。そんな彼の顔を猪木も覚えてくれ、何度か会話するまでになったのだ。
やがて、社会人となった彼はすでに現役を引退したアントニオ猪木と顔を合わせる機会があった。『もしかしてまだ自分を覚えてくれているのでは』と期待しつつ話しかける久保氏にアントニオ猪木は「誰だお前?」と全く記憶していなかったのだ。しかし、前述の学生時代の話をすると猪木は「お前、今は何をやっているんだ」聞いてきた。アドバイザーをやっている旨を伝えると彼を部屋に呼んで次のようなエピソードを話してくれたのだ。
春一番は猪木が懇意にしている芸人だが、彼が病(腎不全)に倒れて病院でICU(集中治療室)に入っていたことがある。かなり危険な状態で、命を落とすかも知れないと感じたのだろう、春一番の奥さんが猪木に電話してきたのだ。
すぐに駆けつけたアントニオ猪木は躊躇せずにICU内に入り、春一番に向かって「元気ですかっ! 元気があればなんでも出来る!」といつものように気合を入れたのだ。すると、瀕死の状態の春一番がムクッと起き上がったのである。そこで猪木はタイミングをはずさずに“猪木ビンタ”でさらに気合をいれたのだ。この出来事から春一番の病状はみるみる回復して、やがて奇跡的に病に勝つことができたのである。
アントニオ猪木からこの話を聞いて久保氏は「さすがに、猪木さんの気合は凄いですね」と感想を口にすると、猪木からは意外な言葉が返ってきた。
「そうじゃない。俺が言いたいのは人間は自分で何かをやろうとする“意志”を持てば病にも勝てる。自ら成そうとする意志こそが大事ということなんだよ」と猪木は言ったのだ。
アントニオ猪木は進路アドバイザーである、久保氏に春一番のエピソードからそのことを伝えたかったのである。
ところで、病から復活を遂げた春一番は翌年には仕事に復帰しており、2009年にはアントニオ猪木の誕生日パーティーでものまね芸人仲間のアントニオ小猪木、アントキの猪木と共にアントニオ猪木を祝福した。この時初めて、アントニオ猪木本人とものまね芸人3人がそろったのだ。
(TechinsightJapan編集部 真紀和泉)