菅内閣で内閣府特命担当大臣(行政刷新担当)に就任した蓮舫氏の著書「一番じゃなきゃダメですか?」が刊行された。大変な物議をかもしたこのセリフであるが、改めて「一番じゃなきゃダメ」だった理由について紹介してみたい。
コンピューター業界に詳しい人ならば、国産コンピューター(ハードウェア・ソフトウェアを含めて)の野望と挫折の歴史や、技術大国・輸出大国日本における、およそ信じられないくらいの圧倒的な輸入超過の実態はよくご承知であろうと思われる。
民生レベルから国家レベルまで、コンピューターの世界はほぼ100%、外国製のものが使われている。
そんな中、国産コンピューターにかけた男達の苦闘の歴史を背負った上で、「一番を目指す」とされてきたのである。
役所の世界は男性的論理の世界であるから、何より大事なのはメンツである。ここで予算が削減されるようでは、これまで予算獲得と研究に邁進してきた先輩達に申し訳が立たない。そんな論理で付けてきた予算である。
しかし、蓮舫氏が著書で指摘しているように、予算は「付ける」ものではなく、「組む」ものである。そうした白紙の立場で「スーパーコンピューター世界一を目指す」と聞けば、「二番じゃダメなのか? 計算性能が世界二位だと実用にならないのか」と考えるのは当然のことである。
推測であるが、女性である蓮舫氏にとっては、男性のメンツ第一主義など全く考慮の外であり、もっとほかに効率的な金の使い道があるのではないかと考えたのであろう。
たとえば大金を投じて開発してほとんど稼働していない電子申請システムの普及促進など、考えるべきことは他にも沢山ある。
まさしく、仕分けされたのは予算ではなく、役人のメンツなのである。省庁間の力関係と長年の折衝経緯で付けてきた予算に「待った」をかけたというところである。
余談であるが、公務員批判・行政刷新の急先鋒は、今回の蓮舫氏と、事業仕分けそのものの成果をさらに批判しているジャーナリストの若林亜紀氏で女性二人が見参という格好になった。
男性論理一辺倒だったお役所への斬り込み隊長として、女性の活躍が期待されているようである。
(TechinsightJapan編集部 石桁寛二)