writer : techinsight

【親方日の丸な人々】お役所はなんでも逆算

予算の要求にせよ、各種の発注積算にせよ、基本は積み上げ方式のはずである。
つまりひとつの事業を行うのに必要な資材や人員の数量を見積もり、それらに各単価を乗じて、総額予算を算出する。
ところが、お役所にはそうした積算を行うだけの技量を持った人間が滅多にいない。
では、どうするかというと、最初に予算総枠を決めてしまって、あとから辻褄が合うように単価と数量を割り付けるのである。

わかりやすいところで、印刷物の発注業務を取り上げてみる。印刷業務の項目別見積もりは実は非常に難しく、専門的な知識を要することが多い。

難しいなら難しいなりに、専門の研修を行い、きちんとした見積もりを行える職員を養成すべきであるが、お役所の発想として「単純作業は外注」「膨大な作業は外注」「専門的な仕事は外注」というものがある。

要するに面倒なことは民間頼みなのである。しかし、予算案作成まで民間企業に任せるわけにはいかないので、最初に「参考見積もり」というものを取って、それに対して市販の単価表に載っている単価を適用して逆算するのである。

民間企業であれば、500万円の総枠予算が認められている仕事に対して、300万円の見積もりを積算して経費を削減すれば、ほめられるところだが、お役所の場合は500万円の予算は500万円であって、余すことは許されない。
よって、こうしたいい加減な積算がまかり通るのである。

もし、積算のミスで予算が足りなくなったらどうするかといえば、積算変更として追加で予算要求すれば良いだけだ。

そして、お役所のこういったどんぶり勘定積算により、過大に見積もられた発注業務は、一次請けの会社が、下請け、孫請けの会社を養うためのていのいいメシのネタになっているという状況である。

お役所も厳しい人員削減を実行している最中であり、ひとつの仕事に特化した職員を養成する余裕もないのが現状であるが、せめてあらゆる積算を専門に行う部署がないと、逆算による闇積算がまかり通り、行政コストの増大を招くことになるであろう。
(TechinsightJapan編集部 石桁寛二)