writer : techinsight

【親方日の丸な人々】国家試験はお役所のメシの種

就職難の折、国家資格を取得しようとする人は増えているようだ。少なくとも手に何も職がないよりは、就職の幅は広がるだろう。ただ、企業が国家資格保有者を優遇するのは、お役所対策のためなのである。国家試験の多くがお役人の利権とがっちり結びついているからである。

記者は、小規模ボイラー取扱主任者の資格を持っている。講習を受けて簡単な修了試験を受けるだけで取れるお気楽な資格だが、この資格がなぜ有効かといえば、労働安全衛生法でボイラーを設置する施設においては、有資格者の設置が義務づけられているからである。一般に男性向けの資格と思われがちだが、給食調理室などの賄いさんをやろうとする主婦の人でも、持っていると便利な資格である。

しかし、この資格を持っているからといって、ボイラーのスペシャリストになったわけではない。近年のボイラーは自動化が進んでいるとは言え、人力に頼らねばならないことはたくさんある。こうしたことは実務経験を積まなければ身につかないのだ。

そして、ボイラー有資格者を設置することを法律で義務づけたのはお役所であり、その試験を実施しているのは社団法人日本ボイラー協会という団体である。言うまでもなくお役所の天下り機関である。

「だから必要ない資格だ」とは言わないが、お役所が決めてお役所が実施している国家試験は、結局のところお役人のためにある資格であって、企業にとっては実際のところ迷惑な場合が少なくない。ひとえに役所対策のために有資格者を置かねばならないからである。

IT系の資格ならば、システム監査技術者試験情報 セキュリティスペシャリスト試験 システムアーキテクト試験 ITストラテジスト試験など難関と呼ばれる試験が並んでいるが、これらの試験にパスしても、IT企業では資格手当の対象にはなるが、仕事が出来る人間とは特段見なされない。

これらの有資格者は、あくまでも「対経産省対策」として揃えておくことが必要なだけで、仕事ができる人間は資格があろうが無かろうが抜擢され、昇進するのが世の習いである。

そして、これらの資格試験を実施しているのは、IPA(情報処理推進機構)という経産省系の天下り機関である。

結局のところ、国家試験はお役所のためにあるのであって、社会のためにあるわけではないというのが実態である。

ただし、受験者本人にとっては、その試験に合格しようがしまいが、自己啓発という意味では勉強するだけの価値はあるだろう。体系的で幅広い知識を身につけることも時には必要だ。

OJTばかり重視していると、頑固な職人気質の人間が出来あがることが多いので、そうならないための安全弁として試験は有用である。
(TechinsightJapan編集部 石桁寛二)