writer : techinsight

【親方日の丸な人々】倫理と法律は曲げるためにある

北海道庁で、ライセンス契約に反して不正にインストールしたソフトウェアがあり、ソフトウェアベンダーの損害額が数億円に上ったことが判明した。
道によると、新たに見つかった違法コピーは、道庁分が1万1067本、道立学校分が5664本。これで違法コピーの使い回しは2万本を超え、道職員らの著作権意識の低さが浮き彫りになった。(北海道新聞の報道より引用)

表層的な原因は単純で、ITガバナンスの欠如。早い話がソフトウェアパッケージメディアの管理がずさんだからである。誰でもインストールできる状態でメディアをオフィス内に放置してはいけないということなのだが、これでは話が続かないので、少し敷衍してお役所のコンプライアンスと倫理について今回は紹介したい。

お役所でも民間でも、経済活動や社会活動は、法令と倫理という両輪の制御の下で行われるが、実際のビジネスはあらかじめ決められたとおりに実行すれば誰でも成功するというものではない。

そこでは、有象無象のかけひきが働くのが常で、倫理にもとる行いが必要悪になる場合もあって、その過程でうっかり法令に触れる行いをして損害賠償等の責を追うことがあり、これを「法務リスク」と呼ぶ。

この法務リスクに対する対応が、昨今のキーワードになっている「コンプライアンス(法令遵守)」である。

ところが、お役所というところは、法令の執行機関であるため、自分たちの行いは決められたとおりにやっていれば、法に違反することはあり得ないという意識がある。
この上に民間人とは比べものにならないくらいの高い倫理観が求められるので、お役人たちの知恵は、コンプライアンスの確保ではなく、抜け道を探す方向に流れてしまう。

たとえば、住民税滞納者の中には、督促に逆ギレしてお役人に食ってかかる人が時折いるが、当のお役人にとっては、いかに貧乏で税金が払えないかを切々と訴えられたほうが都合がよいのである。裁量による徴収免除ないし留保扱いにする方法を考えることができるからである。

かくして、法令も倫理も形骸化して、いつしか形さえ整っていれば、中身はどうでもよいという状態になり、コンプライアンス違反が日常化しだすのである。

違法ソフトウェアの問題は、違法コピーだけではなく職員個人が違法ダウンロードで入手したものを使っていたりする場合があるので問題は複雑だ。

まずは、インベントリー(コンピューターの情報)収集ソフトウェアを導入して、サーバに集めたインベントリーを解析した後、定期的に監査を行い、ライセンス違反のインストールソフトウェアが無いかどうかをチェックすべきである。

また、研修体制の整備も重要だ。お役所のパソコン研修はエクセルやワードの使い方ばかり教えていて、こういったソフトウェアライセンスの教育がおざなりになっていることが多い。

研修の強化と監査の徹底。お役所でも民間でもやるべきことは同じなのである。公務員だけが清廉潔白という幻想は捨てるべきであろう。
(TechinsightJapan編集部 石桁寛二)