公務員にとって悩みのタネのひとつが残業である。霞ヶ関のように年中何かの理由で夜間待機しているというのも悩みであるが、末端の公務員も残業の悩みは尽きない。
定時に帰れば市民からも内部からも「ヒマ人」「給料ドロボウ」などと言われるし、遅くまで残っていれば「要領が悪いからだ」と言われる。サービス残業(残業予算のつかない残業)をしていれば、「お役所が悪しき慣例を作っている」と言われる。そして本当に忙しいときには、上司から「定時で帰れ」と言われる。根本的に公務員は残業をすべきなのかやめるべきなのか誰も答えられない。
法的根拠は一切ないが、「公務員は清廉潔白で国民の手本でなければならない」という「空気」が明らかに存在する。
日本において「空気」は絶対の規範であるから、公務員は国民の手本として、サービス残業をするべきなのか、きちんと予算を確保して手当をもらって残業をすべきなのか、それとも一切するべきではないのか、はっきりしないとジレンマはつのるばかりである。
公務員が忙しい理由は、大ざっぱに分類すると2つある、ひとつは組織の複雑さに起因する「調整」が恐ろしく複雑で時間を要するため定時に仕事が終わらないケース。もうひとつは主に電話による市民対応が業務として計算されていないため、本来業務は定時を過ぎないと取りかかれないというケースである。
多くの官公庁では、市民からの相談や苦情は直接職員が対応しているが、これが残業を生み出す非能率のモトなのである。本来ならこの問題の解決は簡単である。退職公務員や市井の行政書士などで構成される「行政受付センター」のようなものを作って、許認可の受付から、行政要望受付、苦情対応までを行わせればよい。都市部などでは24時間体制で営業するのが好ましい。
省庁横断が無理なら、市町村の住民行政だけでも実施すべきであろう。住民票や印鑑証明発行窓口の24時間営業を求める声は多いのである。
それができないのは、実は市民の側にも責任の一端がある。つまり自らの政治信条や思想をお役所に論説したり、行政の不備を見つけてはお役人に詫びをいれさせて溜飲を下げるのを趣味にしている人は一部ではあるがどこにでもいる。そのような人は直接お役人に直談判しなければ納得しないので、こういう人がいる以上、公務員の電話対応業務は減らない。
かくして、民間企業であれば、さっさとコールセンターに委託してしまうような苦情処理や窓口対応を、デスクワークを本来業務とする公務員がやらねばならず、「業務量は少ないのに仕事が定時で終わらない」という現象が起きる。
24時間営業の「行政事務センター」が実現すれば、公務員の天下り問題もある程度解決し、市民はわざわざ日中休暇を取って住民票を取りに行く必要はなくなり、現役公務員は本来業務に専念できるので、残業も少なくなり、実に住みよい社会が実現されると思われるがいかがであろうか。
(TechinsightJapan編集部 石桁寛二)