writer : techinsight

【親方日の丸な人々】役人は「役」に立たない「人」

お役所には時折、ケンカをふっかけに来る市民がいる。たいていは自分の身勝手な要求を通すためにゴネるわけだが、そういう人たちだから暴言も吐く。ある市民が曰く「貴様ら役人は【役】にたたない【人】だから役人って言うんだろうがぁ!」これを聞いていた職員全員が感心して一言「当たっている!」
現在の社保庁の大量分限免職に係る再就職騒動を見るにつけ、まさしくそのとおりだと実感する次第である。

社保庁でヤミ専従などを行って処分を受けた職員は、新組織では採用しないことになったと思ったら、厚生労働省の非常勤職員として採用するという話になっている。このヤミ専従職員は、実質選挙応援要員として活動を行っていた者が多数いる。

以前にも紹介したが、選挙シーズンともなると、組合書記局は支持者集めカードと応援候補者ポスターがうず高く積まれ、選対事務所別働隊と化す。これらの人々は、国民の役にも立たず、役所の役にも立たない人々だが、選挙応援の役には立っているので、無碍に生首を飛ばすわけにはいかないのだ。

彼らは基本的に官民人材交流センターに登録して再就職口を探すことになるわけだが、これまで常態化していた天下りの言い訳は「役所で得た貴重な経験を民間で生かす」であるから、さぞや社会保険事務の円滑な推進を図るための企業の重要な人材が豊富にいると思うだろう。

でも、実際には彼らは役所の中のごくごく狭い領域で仕事をしていたに過ぎないので、世間に放り出されたら、全く役に立たないのだ。面接で「あなたの技能や技術は何か」と聞かれたら、自信たっぷりに「総務課総務係長です」と、何の役にも立たない寝言を言うことしかできない。

こういう人々だから、厚生労働省の非常勤職員くらいしか働き口がないのである。収入は大幅に減るだろうし、場合によってはマンションのローンが払えなくなり、路頭に迷うかもしれないが、世間は同情しないだろう。

新組織に採用される人は、国民の役には立たなかったが役所の役には立っていた人々であり、採用されない人々は、国民の役にも役所の役にも立たなかったが、選挙の役には立った人々であり、どっちの意味においても「役人」なのである。
(TechinsightJapan編集部 石桁寛二)