NHK北海道ローカルニュースにて、北海道が2012年に財政健全化団体入りすることがほぼ確実な情勢であると報道された。
90年代に、「試される大地」という軛のようなスローガンを掲げ、再生を願って努力してきた経緯も空しく、財政状況は極めて悪化の一途を辿った。本来ならこの地で試されるべき「道州制」という施策があるのだが、現状では無理であろう。
国と都道府県の二重行政の弊をなくする道州制については、実は号令一つで実現するほど簡単なものではない。
国の直轄事業を施行する大義名分は、「複数の県にまたがる事業を一貫して行う必要があるとき」または「極めて大規模な事業であって、都道府県には実施が困難な事業」である。
それならば、国(直轄)と「道」(補助)の行政区がまったく同じである北海道をモデルケースとして先行実施するのが、非常に効果的である。
しかし、その場合、これまで道が行ってきた事業の一部を市町村に渡さねばならないのだが、ほとんどの市町村にはその体力がないのである。旧産炭地を中心とした廃墟が立ち並ぶ限界集落への行政サービスの提供、原野の中に点在する市町村をつなぐために伸びきった道路の維持と冬期の膨大な除雪事業。これらを一貫して提供するのは難しい。
「クマが通る道路を造っている」と揶揄される北海道の道路事業であるが、正確には原野の中に長大な道路を築造しなければならないので、そこをクマやエゾシカやキタキツネが通るのである。
特に医療の問題は深刻で、札幌や旭川などの比較的大きな都市にしかない総合病院へ通院するために、往復5時間もかけてバスを利用する住民のためのバス路線の確保も困難である。
財政事情悪化の原因は、ここ10年で右肩下がりで減少し続けた公共事業予算の削減である。広大な土地には膨大なインフラ整備費用がかかることを逆手にとって、多額の公共事業予算を要求し、その恩恵で暮らしていた土地なのであるから、公共事業の削減は致命的である。
これに民主党政権下の「コンクリートから人へ」の施策が実行されていけば、北海道からの人口流出が加速し、第2次産業、第3次産業の支店経済とも言われていた本州企業の撤退も加速するであろう。あとには「誰も使わない立派な道路」と廃墟と原野が残るのみである。
試され尽くした北海道を、これからさらに試すとなれば、旧産炭地限界集落住民の都市部への移住勧告くらいであろうか。移住の強制は憲法に抵触するから慎重になる必要があるが、満足のいく行政サービスを提供するには、ある程度の居住地集約化は避けて通れない。
そして、二重行政の最も大きな弊害であった、大量の国家公務員があまるので、彼らは北海道から撤収し、全国に散らばっていくことになる。
生まれ育った北海道に骨を埋めるつもりで奉職していた地元採用の国家公務員には辛い北国での生活を逃れて、暖かい本州での新生活が待っているだろう。それが必ずしも幸福であるかどうかは不明であるが。
(TechinsightJapan編集部 石桁寛二)