現在、鳩山内閣の行政刷新会議が各省庁の無駄な事業の洗い出しを行っている最中である。しかし「無駄」が必ずしも悪いというわけではない。
民間ではリスクが大きすぎて出来ない実証実験などを国が率先して行うという事業もある。もちろん失敗はするだろうが、失敗から何かを学べばよいのである。
むしろ洗い出すべきは「無用な事業」「不要不急の事業」である。省庁の政策・事業を概観していると、どう見てもノリで始めたとしか思えない事業がある。そのひとつとして、国土交通省/厚生労働省が提携して行っているアイランドテラピー事業について紹介したい
アロマテラピーの間違いではない。島の大自然が持つ癒し効果に注目し、人口流出が止まらない離島に人を呼び寄せ、長期滞在または定住を促進しようという試みだ。
しかし、やっていることといえば、「空き屋情報」の提供であるとか、島の農業や漁業の情報提供くらいである。
言うまでもないことだが、定住者を呼び寄せるには、過疎地医療の問題解決、商業的利便性の確保、さらに空港を敷設し主要空港から直行便を飛ばすなどの多くの課題が山積している。
増してや、テラピーを売り物にするならば、自然療法に詳しい医師が常駐する保養所の建設や散策路などの整備も必要だ。
リゾート開発に重点を置くならば、観光会社との連携が不可欠だ。
「島に住みませんか?空き屋有りますよ。都会で心を病んだ人は島に渡って漁師になりませんか」と国が呼びかけて、応募する人がどれだけいるだろうか。そして、こうした定住者の募集は、離島だけではなく、多くの本土内の過疎集落が行っている。
今月に東京池袋で開催される国土交通省主催の離島フェスタ「アイランダー」を見ると、案の定、多くの財団法人が関連している。結局のところ天下り先のパフォーマンスでしかないことが一目瞭然である。
—参加団体—
国土交通省 ・ 財団法人 日本離島センター
■後援:内閣府・総務省・農林水産省・(財)小笠原協会・(財)沖縄協会・(社)日本観光協会・離島振興対策協議会・全国離島振興協議会・都市と農山漁村の共生・対流推進会議
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アイランドテラピーとは別物の離島振興イベントではあるのだろうが、テラピーもやっているのなら肝心の厚生労働省も後援して、「島による癒し」についてもアピールすべきであろう。
成果があろうが無かろうが、毎年予算を獲得して、適当にこうしたイベントを開催して、天下り財団のOBがメシを食えればそれでよいというところだ。
離島といっても、様々である。トロピカルフィッシュが見れてダイビングに最適な人気の島もあれば、日本海の荒波が押し寄せる厳しい気候の島もある。離島の振興はそれぞれの特性に応じて、自治体が主体となって官民協力の下で行われるべきである。
「コンクリートから人へ」という鳩山内閣の政策は、長年「トンカチ官庁」と馬鹿にされてきた国土交通省(旧建設省・運用省)の悲願であった政策官庁への脱皮のチャンスである。同省の舵取りをするキャリア組はフンドシを締めてかかる必要があるだろう。離島の振興よりも、もっと大きな課題が山積しているはずである。
(TechinsightJapan編集部 石桁寛二)