writer : techinsight

【親方日の丸な人々】10000年に1回の大洪水が来る?

ダム中止問題を中心に前原国土交通大臣の顔をテレビで見ない日はないという状態だが、本当にダムは必要ないの?今までは何だったの?という疑問も多々あるので、親方日の丸目線で、この疑問に答えてみることにしよう

古代王朝の時代から、「川を制する者は国家を制する」という定言が存在する。有史以来為政者が行ってきたことは、まず治水工事だったのである。洪水から国民を守り、水資源を確保することこそ為政者の使命であった。

現在、国民生活の重要なライフラインになっている「道路」は、昔は「歩く人が多ければそれが道になる」とばかりの自然発生的なもので、そうでなければ軍路である。かなり後になってから街道というものが整備されるようになったのだ。

この定言は未だに健在で、国土交通省の組織順(建制順とも言う)は、治水系は道路系より先になっており、治水系の技術官僚が大きな力を持っていることがわかる。

ダム工事を含めた治水工事を行う基準は、10年に1回、あるいは100年に1回規模の豪雨が来たときに、洪水を防げるかどうかという観点で進められる。このレベルの治水工事はダムも堤防築造も蛇行流路のバイパスもすでにほとんど終わっている。
現在、氾濫の危険が大きいのは小河川である。

ここで目的を達成したのだから、治水工事はもうやめて道路や上下水道などのインフラ整備に予算を割こうというのが正常な考えだが、それでは治水系役人の仕事が無くなるし、河川工事でメシを食っている中小土建業界も困る。

そこで、500年に1回規模の洪水とか1000年に1回規模の洪水というものを想定して、どんどん工事施工のネタを作っていくのである。その流れでダムも造るということになるのだが、この調子でどんどん河川工事・ダム工事を続ける必要があるのかどうかという疑問が、今直面している問題である。

ネタがなくなれば、10000年に1回の洪水といったものを想定して治水工事をすることになるかもしれず、そもそもそんな先まで人類が今の形で存在しているかどうかすら怪しい。それにダムはそんなに長持ちしない。持ってせいぜい100年だ。

もちろん、人命だけは絶対に守らなければならないが、人命を守る方法はむしろ避難場所を確保して、洪水予報を迅速に出すなどの、地域防災に重点を置いた方が賢明であるし、コスト的にもはるかに安い。

物的被害対策のほうは、適切な資金積み立てを行って補償や無金利貸付を行える体制を作ったほうが効率がよいだろう。

現在、民主党政権のスローガンとなっている「コンクリートから人へ」という施策は、国道交通省内的には、特に治水系役人の落日であり、数千年に渡って受け継がれた為政者の定言「川を制する者は国家を制する」は、国内ではすでに寿命が尽きかけているというべきであろう。
(TechinsightJapan編集部 石桁寛二)