writer : techinsight

【親方日の丸な人々】なぜお役所にタイムカードと日報がないか

昔懐かしい植木等の歌で、「サラリーマンは二日酔いでヨタっていてもタイムカードをガチャンと押せばカッコだけは付く」という歌詞のものがあった。

しかし、民間企業ならどこにでもあるにもかかわらずお役所にないものがある。タイムカードと日報である。
(なお、警察や消防などの役所は別である)

多くの役所では、出勤簿と呼ばれる一ヶ月単位の帳簿に押印することで、出勤の証とする。タイムカードのほうが簡単ではないかと思うかもしれない。なぜ無いのだろうか。

理由は2つある。ヒマな職員にはカラ残業代を支給し、忙しい職員あるいは「忙しいふりをして上司にアピールしたい職員」のサービス残業を支援するためである。

つまり退勤時間の打刻ができるタイムカードが存在しては困るのだ。もっとも民間企業でもサービス残業が常態化している中小企業などでは、タイムカードを形式上押して退勤扱いにしたあと、デスクに戻って仕事をするということが行われているだろうが、これは労働行政当局から厳重指導を受けるおそれがあるので、自然と歯止めが効く。

しかし、お役人の残業は完全に自己管理なのである。残業したければ、残業予算の範囲内で残業するし、残業代がもらえなくても、上司へのアピールのためだけに残業する職員もいる。

そして、このお役人の不思議な残業を後押ししているのが、業務日報の不存在である。基本的に営業活動が存在しないお役所では、日報がない。(繰り返すが警官や消防署など事件を扱うお役所は別である。)

しかし、純然たる事務方にだって業務日報が必要である。1日に処理した案件の数からシステムに入力したデータのレコード数まで、管理者が統計的に把握しなくてよいのだろうか。

それぞれの担当者が個別にセルフスケジュールで業務処理を行っているから、調整のための会議やミーティングが頻繁に必要になる。会議やミーティングが増えれば、その分本来業務がお留守になって、残業が増える。

今後、お役人の給料は本給も残業代も含めて、大幅に削減されることが予想される。その際に、すぐに「サービス残業はイヤだ」または「サービス残業は上司へのアピールの絶好の機会」としか考えないところが、お役人の浅ましいところである。

ただちに、管理者向けマネージメントシステムを用意し、係の業務進捗は係長や主査が、課の業務進捗は課長がしっかり把握すべきであろう。職員の繁忙閑散状況に応じて、タスクを柔軟に振り分け、多くの職員が定時に退庁できるようにすべきである。

お役人の中には、昭和時代のグータラ役人のイメージである「仕事をしないで定時退庁」という市民の目がイヤで、無理矢理仕事を作って残業をしている職員が少なからず存在する。

しかし、それは残業代という人件費と、庁舎の光熱費の無駄遣いなのである。業務はきちんと組織が管理して、ワークライフバランスを確保する見本を見せることこそ、平成公務員の任務であろう。

なお、霞ヶ関のような激務官署は逆の意味でタイムカードがあっても無意味である。徹夜や泊まり込みが常態化しているからである。
(TechinsightJapan編集部 石桁寛二)