お役所のパソコンには、有効に使えば大幅な業務効率化と経費削減に貢献できるにもかかわらずほとんど使われていないソフトウェアが多数インストールされている。今回はその中の代表格とも言うべき、Adobe Acrobatの有効活用法について提言してみることとする。
現在、電子文書の標準フォーマットとなっているPDFファイルを閲覧するには、Adobe Readerが必要だが、これは無償で提供されている。しかし、PDFファイルを作成するためとして、本家ソフトの高価なAdobe Acrobatを導入しておいて、ほとんど使っていないというお役所が存在する。
Adobe Acrobatを使えば、ワープロソフトや表計算ソフトで作成したファイルを、PDFに変換できるが、変換するだけでは宝の持ち腐れだ。
付箋機能があるので、メールで受け取った提出書類PDFファイルをチェックして、修正事項をコメントして、返すといったやりとりが行えるし、Adobe Acrobat自体でグループコラボレーションも行える。
しかし、送られてきたPDFファイルを紙で印刷して、紙の付箋紙でコメントを書いて、送り返し、受け取ったほうは、その資料にさらに説明資料を付けて持参するといった昭和時代から変わらない仕事のやり方をしているのである。
チェックも返答もすべてPDF上で行えば、作業時間の短縮、消耗品費の節約、持参説明のための旅費や交通費削減、印刷用プリンタの撤去などで、相当の経費節減と業務合理化が図れる。
このほか、複数の公務員にインタビューした結果、宝の持ち腐れとなっているソフトウェアがリストアップできたので、その一部を紹介したい。
念のために申し添えるが、ソフトウェアそのものが不要だと言っているのではない、「使わないのなら購入するな」という意見である。
○Microsoft Office Professional
使っているのはWordとExcelだけというユーザーが大半である。Accessはそもそも使えるユーザーがほとんどいない。Outlookはグループウェアが別にあるのなら、全く必要ない。場合によってはWordも不要である。Wordには強力な文章校正支援機能があるが、こういった機能を使って文章のブラッシュアップをすると、それをチェックする上司の仕事がなくなるので、Windows付属のWordpadで十分だろう。
○Adobe InDesign/Illustrator
パンフレットを作るため導入していると説明しているが、全部自前でデザインして印刷会社に電子入稿できるユーザーは稀である。
○Adobe Photoshop
現場写真の編集やブラッシュアップというニーズはあるが、オープンソースのGIMPで大半は間に合う。
○Justsystem 一太郎
パソコンが導入された初期には、このソフトでワープロを覚えたユーザーもいるので、不要とまでは言わないが、全員のパソコンにインストールする必要はないので、希望者だけにしたほうがよいだろう。もちろん一太郎文書を標準フォーマットにするのであれば、話は別である。
こうした宝の持ち腐れソフトは、思い切って捨てるか、逆にこれらのソフトを使って大幅な業務合理化と人員削減を行う方策を考えて、研修体制を整備するといったことが必要である。
市民オンブズマンなどは、一度お役所のIT資産台帳の閲覧を行って、個々のソフトウェアの必要性を問いただすといった活動を考えた方がよいのではないだろうか。
(TechinsightJapan編集部 石桁寛二)