1958年生まれの作家、イラストレーター、ミュージシャン、ラジオパーソナリティー、などさまざまな肩書きを持つみうらじゅん氏。その若かりし頃の思い出を下敷きとした青春ストーリー、『色即ぜねれいしょん』が8月15日から公開される。現在50歳前後のお父さんたちには懐かしく、若い人には新鮮に映る1974年の高校生・純のゆっくりとした「夏時間」は、ラムネ瓶の泡のように清涼感たっぷりの、爽やかな青春映画に仕上がった。この夏、親子で見に行くのもいい。
映画公開前に“フリーセックスの島”などきわどいセリフが話題になり、少々エッチなイメージが先行した『色即ぜねれいしょん』。実は純情そのものの内容で、登場人物もみな可愛らしい。仏教系の男子校に通う高校1年の乾純(渡辺大知)は、フォーク音楽とギターが大好き。ケンカは弱く、1974年当時の不良っぽい生徒の多い京都の学校では少々肩身が狭い。同じくビビリであんまりモテない親友の伊部(森田直幸)と池山(森岡龍)の3人で“何か”を変えるために隠岐島に旅に出る。
(この先ネタバレあり。気になる方は劇場で。)
「どこにでもいる高校生男子が、夏休みに友達と島に行って帰ってくる・・・・・。」
普通に生活していれば、大体の人が経験する夏物語。昔ならあまりにも“当たり前過ぎて”映画にするまでも無い題材なのだが、メールや携帯の普及で大人とはおろか友達とさえも距離感がつかめない“コミュニケーション下手”な若者が日本を覆いつくす今、不器用でも時がゆっくり過ぎる当時の青春を見るのは新鮮だ。
魅力的な女子大生オリーブ(臼田あさ美)や、音楽好きのヒゲゴジラ(峯田和伸)とアキちゃん(山本浩司)のユースホステルの男たち、ヒッピー家庭教師(岸田繁・くるり)など“刺激的な大人”たちと触れ合い、これから自身に起こる様々な儀式に胸を膨らませる主人公・純。しかし伊部と池山の友情に加え、初恋の女子(石橋杏奈)や、ヤンキーの須藤(古川雄弥)などあくまでも純の生きるフィールドは等身大の輪。“夏の出来事”で急激に大人になる訳でもなく、純は高校生らしいやり方で自分に自信を持っていく。
それを温かく見守る両親(堀ちえみ、リリーフランキー)や、印象的な説法を説く先生(塩見三省)などの“本当の大人”の存在感も素晴らしい。
随所、70年代っぽくない部分も見られるのだが当時の雰囲気は十分に味わえる映画。娘や息子、また親と見に行って70年代を語るのも楽しそうだ。主人公・純を演じる渡辺が爆発するシーンは迫力満点。“かわいいだけ”の渡辺に満足できない “黒猫チェルシー”ファンも納得だろう。
(TechinsightJapan編集部 クリスタルたまき)