衆院選挙も終盤に入り、各党選対事務所は毎日が戦争状態であろう。
選対事務所は選挙参謀を中心に支持者団体から動員をかけられた人間が終日詰めているが、官公労は公務員であるから、政治活動は禁止されているので、そんなことはしていないと思うかもしれない。
しかし、どうやら一部の官公労幹部は、しっかり選対事務所に出入りしているそうなのだ。
すでにお役所を退職した元職員から、「今はやっていないと思う」と前置きした上で、20年くらい前の選挙応援の状況を聞くことができた。
元職員の話によれば、選挙が大詰めを迎えると、官公労組合員に動員がかけられ、選対事務所の指示で、電話作戦やパンフレット配りなどを行っていたそうだ。
もちろん、顧問弁護士が個別の作戦行動を吟味した上で、違法ではないとされた行為のみを行っているので犯罪ではないが、ヤミ専従とセットで行われていたとすればなにをかいわんやであろう。
そもそも職員の待遇を守るための労組がなぜ政治活動に血道を上げるのだろうか。
彼らには、公務員という意識がないわけではないが、公務員である前に「労働者」だと考えているのである。
彼らにとって労働者とは、Workerという意味ではない。「真理に目覚めた者」「歴史の運動法則によってやがて世界を支配する救済者」という特権エリートの地位を意味するのだ。
この特権エリート意識の前では、違法適法グレーゾーンの選挙活動は、労働者の「崇高な使命」の前では、神命を帯びた任務なのである。
キャリアとノンキャリアで天地ほどの身分の開きがある公務員の世界では、「労働者こそ真のエリート」という思想にすがらなければ、あまりにもミジメだという事情もある。
かくしてヤミ専しながらヤミ選を行っている公務員を見たければ、一度組合書記局というところを尋ねてみると良いだろう。
選挙ポスターと支持者カードの山に埋もれた中で、活動に邁進する公務員の姿が見られるはずだ。
(TechinsightJapan編集部 石桁寛二)