世間的にはお盆/夏休みシーズンであるが、霞ヶ関にはお盆はない。次年度予算概算要求の最盛期なので、三日完徹なども当たり前だ。
激務のあまりウツを発症する職員もいるが、実は地方で左うちわな勤務をしているはずの公務員も多くウツを発症する。
地方の閑職公務員はラクチンなはずなのに、なぜウツが?と思うかもしれないが、仕事が楽で身分保障がされているのは、意外と苦痛なのである。
もっとも公務員とはいっても、基本的には勤め人であるから、昇進ウツや転勤ウツ、出世競争に敗れたウツなど、様々な理由で精神疾患を患う。
しかし、最大の理由は、公務員は事実上転職することが不可能であるため、人間関係で躓くと逃げ場がないことである。
公務員も人間であるから、人それぞれ個性は違うが、役所においては個性を発揮することや、合理性を追求することは悪なのである。
たとえば、資金前渡官吏事務という経理の仕事があって、お役所ではこの仕事に精通している職員は尊敬されるが、それは役所内だけのことで、民間企業に転職して経理事務をやっても、決算処理も不良債権回収のひとつも満足に出来ない。
営業の才能もないから、民間企業では全く使えない人間ができあがる。役所に入って10年もすれば、役所を辞めては食べていけない自分の姿に気がつく。
民間企業なら、人間関係が悪ければ去ればよいだけだが、お役所で人間関係に躓いたら、「去るも地獄、残るも地獄」という状況になる。
よって必然的に精神に不調を来すことになる。
この状況を改善するには、用語本来の意味での「リストラクチャリング」が必要である。リストラとは本来クビという意味ではない。
必要なスキルを持つ人材を必要な期間だけ雇用する米国流人事管理手法を「人員の最適配置」=リストラと呼ぶ。
具体的には、さまざまなキャリアマップを設定して、必要な研修を施し、そのまま役所で勤め上げるもよし、民間企業や外郭団体に転職するもよし、多様な道を開くことが必要なのだ。
これによって、ウツを根絶できるわけではないが、「去るも地獄、残るも地獄」といった切羽詰まった状況は改善され、それぞれの個性に応じた人生計画が立てられるであろう。
なお、わかりきったことであるが、ウツを発症した職員は、医療との連携の下で、適切に対処する必要があることを申し添えておきたい。
(TechinsightJapan編集部 石桁寛二)