writer : techinsight

【親方日の丸な人々】ヤミ専従は集金システム

社会保険庁、農林水産省に続いて、国土交通省の出先機関である北海道開発局においても、大規模なヤミ専従が発覚した。

近く第三者委員会を招集して実態解明と処分、給与返還などの手続きが取られるとのことだが、この「ヤミ専従」すなわち勤務時間中に許可なく組合活動を行う行為は、単純に労組だけの責任でも、当局の監督不備でもない。もちろん組合員個々人の責任でもない。そこにあるのは、お役所とパラレルに存在する大規模な集金システムの維持という図式が存在する。

ヤミ専従を無くするのは実は簡単なことである。労組の執行役員を全て休職または離職専従職員で構成すれば良いのである。

しかし、それでは専従職員の給与を賄うために一般組合員から徴収する組合費の負担が上昇する。組合費が上昇すれば、生活防衛のために労働組合を脱退する者が出始める。そうすれば組織率は低下し、予算が厳しくなるという悪循環になる。

そこで、給料はお役所から支給されながら、組合活動を行うヤミ専従職員が生まれる。お役所当局もそれを半ば黙認している。なぜか。

それは、労使の問題というより、大人社会の処世であるが、ヤミ専従を断固追求すれば、労使の仲が険悪になり、春闘などにおいては、お互いに一歩も譲らない徹夜の団体交渉というのが常態化する。誰だって、徹夜でつるし上げられるのはイヤであるし、つるし上げているほうの体力だって消耗する。

そこで、労使馴れ合いにより、当局労組のヤミ専従を黙認する一方で、労組側も譲るべきところは譲る。かくして労使交渉はセレモニー化し、形骸化していく。

気の毒なのは、職員の生活を守るためであると信じて、ヤミ専従に従事していた主に若手の組合員である。

彼らは職員のために労働組合があると信じているが、実態は逆である。労組幹部の特権を維持するために、職員(組合員)が存在しているのである。

組合費やカンパという名目で集められた資金は、労働系金融機関や関連団体に流れる。ヤミ専従は、集金システムを維持するための装置のひとつなのだ。

もちろん、ヤミ専従は公務員として不適切な行為であり、OBにまで遡った給与返還請求を行うべきであるし、労組側も今回の事件を通して、改めて公務員労組の価値を問い直す機会にもなるであろう。
(TechinsightJapan編集部 石桁寛二)