今月7日、タイ―カンボジアの国境付近にあるプレア=ヴィヒア寺院(タイ名=カオ・プラ・ウィハーン遺跡)の世界遺産登録1周年を祝う式典がカンボジアで盛大に開催された。しかし、現在もタイは領有権に関して異議を唱え続けており、付近では緊張状態が続いている。
事の発端は、2008年7月7日に、この遺跡が、カンボジアの所有するものとしてユネスコから世界遺産登録を受けたことである。それに対して、タイ側は異議を唱え、この遺跡がタイのものであることを主張したのだ。
その後、両国軍は遺跡付近にて対峙し、たびたび交戦を繰り返してきた。昨年の10月、および今年の4月には、兵士に死傷者も出ている。
そうしたなか、今月7日にはカンボジアの首都プノンペンにて、プレア=ヴィヒア寺院の世界遺産登録1周年を記念する式典が盛大に開催された。多くのパフォーマンスが催され、また町にはカンボジアの国旗があふれて、皆で一周年を祝ったのだ。
カンボジアの人々は、タイ人はカンボジアが世界遺産登録をしたことによって武力衝突が起きているというがそれは正しい認識ではないとするとともに、また、タイがどのように思おうとカンボジア人のプレア=ヴィヒア寺院を誇らしく思うとしている。
そうした式典が盛大に催されながらも、いまだにタイは遺跡の領有権を認めず、今月に入ってユネスコと世界遺産委員会に改めて異議を唱えている。
それに対し、カンボジアは強い憤りを示すとともに、遺跡付近の兵軍を増強した。タイ軍も兵軍を増強するとともに、20箇所ほどの防御施設となる壕を掘ったという。
世界遺産問題を軸とした、隣国に対する嫌悪感のあらわれは、遺跡周辺の緊張状態を高めており、今後も予断を許さない状況になっているといえるだろう。
(TechinsightJapan編集部 若曽根了太)