writer : techinsight

【自動車氷河期】は、終わりに向かうのか!?

これまで、【自動車氷河期をゆく!】というタイトルで連載を続けてきた。事の発端は、世界的な不況の影響で、世界中で自動車の販売が落ち込み、生き残るために各メーカーが苦肉の策を投じてきた。これまで、それらの自動車業界にとってネガティブなニュースを取り上げてきた。しかし、最近ある変化が起こっている。これは【自動車氷河期】の終わりを意味するのか?

昨年後半から100年に一度といわれる世界的な不況に陥り、それに追い討ちをかけるように「ビッグ3」、アメリカのGM、クライスラー、フォード3社の経営難が表面化し、これにより、それまでの自動車業界の生態系を大きく狂わせた。、生き残るための提携や提携解除、コストや人員の削減などなど挙げたらきりがないくらいのネガティブなニュースが毎日のように続き、今となっては、ちょっとしたニュースくらい「またか・・・」といった感じで聞き流してしまうほど慣れてしまった。

本当に慣れとは怖いものである。この状況が当たり前のようにすら感じてしまう。

記者自身、【自動車氷河期をゆく!】という連載を続ける以上ネガティブなニュースをどこからか見つけてこなくてはいけない。しかし本来は、そんなニュースはないほうがいいのである。そう思いながら、記事を書き続けてきた。

しかし最近ちょっとした変化を感じる。

それは、自動車関連のネガティブなニュースが減っているのである。【自動車氷河期をゆく!】というタイトルで書くニュースが見つからないのである。これはいったいどういうことなのか?

自動車氷河期は終わりに向かっているのか?それとも終わったのか?

そう願いたいのはやまやまだが、そう簡単に終わるとも考えにくい。いったい今日本の自動車市場はどういう状況にあるのかを探ってみたい。

そもそも、自動車氷河期の終わりはどこなのかを決めるとすれば、最低でも、前年度の販売台数に並ぶくらいの活気が市場に戻らないといけない。現時点ではどうだろうか?答えを言えばNOである。3割から4割減が常である。売れているのは、ハイブリッドカーなどの、国からの補助金が支給されるエコカーばかりである。トヨタのプリウスは5月に発売され異常すぎるほどの受注を挙げているが、補助金の後押しが大きいのは言うまでもない。それに、プリウスをインサイトを意識し、予測よりもはるかに安い価格設定で発表されたため、トヨタの他の車種がまったく売れていないのである。よって結果的に市場全体を見渡してみれば、あきらかな回復は無いと言っていいだろう。

一時期は、ラインの停止、従業員の削減、ラインナップの削減といった業務の効率化、コンパクト化に向けた策が多く報じられた。それらのニュースが今はほとんど無い。ここからも回復の兆しか?とも思えるが、単に、企業が市場の動きに合わせるための行動を一通り終えたということである。それは利益を出すためにというレベルではない。赤字をいかに減らすかといったレベルであろう。氷河期が終わるのをじっと土の下で耐えているような状況であるに違いない。

これらのことを考えれば、やはりそう簡単に自動車氷河期が終わりに向かうわけでもなさそうである。

しかし、ネガティブなニュースが減る一方、その逆のニュースが目立っている、新型モデルや特別仕様車の発表、停止していた工場の再開や新工場の完成などの明るいニュースが報じられている。

これはどういうことなのか?企業は先を見据えて動かなければならない。時代の波が来たときに準備を始めるのでは、波に乗れないのである。ということは、その波に乗るための準備をするのが今であると踏んでいるという結果ではないであろうか?

それは氷河期の終わりはすぐそこに来ているということなのか?そうであるが厳密に言えばそうではない。終わりが来ているのでなく、そろそろ終わりにすると言うほうが正しいのではないだろうか。これは誰かが市場を操作しているという意味ではない。消費者の気持ちを終わりに向かわすという意味である。

そもそも、景気が悪くなるのは、外的な要因は当然であるが、消費者の財布の紐が硬くなり、それが緩まないのが一番の原因である。日本がその長いトンネルから抜け出せていないのでそれを例に挙げるが、硬くなった財布の紐が緩まないのは、この財布の中のお金を使ってしまっても大丈夫だろうか?今後生活してゆけるだろうか?という不安からではないだろうか。永田町での足の引っ張り合いのような政治をテレビで毎日観ていると、不安になるのも当然である。国会、政治だけでなく毎日観るテレビからの情報は消費者の心を操ってしまう。

テレビで放送された食品や商品が飛ぶように売れ、逆に企業が悪いニュースとして放送されれば倒産すらしかねない。

それほどまでにメディアの影響力は強いのである。これまで、負の連鎖でネガティブがネガティブを呼んでいた。しかし、そのネガティブなニュースが一通り出尽くした感がある現在、明るいニュースが出始め、これを皮切りに消費者の心もポジティブになり、消費者自身が自動車氷河期が終わったと思うことが本当の終わりのときではないだろうか。

今後、自動車氷河期が少しでも早く終わりを迎えれるように期待し、自動車氷河期終結に向けた明るいニュースを追っていきたい。
 (TechinsightJapan編集部 ”自動車魂世界一”car journalist 木下)