富士スピードウェイは静岡県小山町に位置するサーキットで、経営権はトヨタが握る。同サーキットでは、2007年および2008年にF1日本グランプリが開催され、来年も開催される予定であったが中止が発表された。
それまで、F1といえばホンダ、F1といえば鈴鹿サーキットというのが常識であった。
そこに、待ったをかけたのがやはり、トヨタであった。トヨタのF1参戦、そして、2007年にトヨタが運営する富士スピードウェイでのF1開催決定。日本のモータースポーツファンにとって、鈴鹿サーキットは聖地ともいえる。そこで開催されないF1グランプリにファンは肩を落とし、果たして成功するのかといった声が囁かれた。
その、予測どおり、かなりのトラブルがあったのは事実であるが、翌2008年も富士スピードウェイ(以下:富士SW)でF1が開催された。今年は鈴鹿サーキットで開催されるが、来年もまた富士SWでの開催が決まっていた。
しかし、ここへ来て、来年以降、富士SWでのF1の開催を断念するとの発表があった。
自動車氷河期の影響はもちろんである、どこから経費を削るかと考え、その結果がこうである。要は、トヨタ側は、F1を富士SWで開催しても採算が取れないのである。サーキットだけがそこにあっても、F1が開催されるとなれば、そこに10万人の人が一気に訪れる。その人たちの受け皿となる、宿や飲食店などが周辺にはほとんどなくそれらの整備が大きな課題であった。今後継続的に開催するとなれば、それらの問題をパスすることが不可欠であったが、そこが大きなネックになったのは事実であろう。
自動車業界にとってはまた一つ暗いニュースが報じられた結果となった。しかし今後日本でF1が開催されるならば、鈴鹿サーキットしかない。
結果的にもとの鞘に納まった。鈴鹿サーキットの周辺には、F1の息吹が根付いている。レーシングカーの爆音は市内に轟くが、騒音ではなく風物詩となっている。民宿は、F1を観に来たお客さんが来年の予約をして帰る。飲食店には、F1レーサーはもちろん、モータースポーツ選手のサインがずらりと飾ってあり、空き地はF1開催時には、高額な駐車場へと姿を変える。
喜ぶべき事実ではないが、視点を変えようではないか。モータースポーツのメッカに活気が戻り鈴鹿を中心に、景気回復、そして自動車氷河期終焉への歩みを期待したい。
(TechinsightJapan編集部 ”自動車魂世界一”car journalist 木下)