道路関係の予算で、マッサージチェアや豪華椅子などを購入していた事件(事件というほどでもなく、「不適切な予算執行」だが)を受けて、2009年度から全省庁の事務経費が大幅削減された。それを受けて、1本のエンピツも大事に使っていることだろうと思われるが、実はそうでもない。
事務費予算は、おおむね上級官庁に行くほど足りない傾向があるが、それでも文房具には不自由していないのは、下級官庁にタカるからである。
本省(本庁)は地方局に、地方局本局は現場事務所にそれぞれ文房具を買ってもらって、メシ上げするので、別に困らないのである。
なお、最末端の現場事務所は、どうやって予算をまかなっているのか、某官庁に取材したが不明であったのは残念だ。
さらに、お役所伝統のペーパー偏重も健在である。文書をPDFファイルにして同報メールをしたら、全員それをプリントアウトして、各自がマーキングと付箋紙貼りをして「勉強」する。
PDFの検索/しおり機能で、縦横覧すればあっという間に内容が頭に入るはずだが、PCのモニタを見ているだけでは遊んでいると思われるので、わざわざ印刷して書類をめくって仕事をしているパフォーマンスをするのである。
紙とインクと消耗品そして時間の多大な無駄遣いに他ならない。
一方で、福利厚生物品の購入は過剰なまでに出費を控えるようになったが、これは逆に好ましくない。職員が快適に執務できる環境すら整えないというのでは、生産性を下げることにつながるからだ。
マッサージチェアや血圧計などは、休憩室に常備し、コイン式で料金をとって経費回収すればよいのである。もちろん公庫には戻せないが、ふるさと納税のような形で還元すればよいだろう。
このように、お役所は傍若無人と過剰反省の二極を行ったり来たりしており、適度なスタンスというものが乏しいようである。
(TechinsightJapan編集部 石桁寛二)