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writer : maki

【エンタがビタミン♪】X JAPAN・YOSHIKIが「辛くて見てられない」。Toshlの“洗脳体験”告白番組に「実はもっと複雑」と本音。

X JAPANのボーカル、Toshlがバラエティ番組『中居正広のキンスマスペシャル』で自身の洗脳騒動について赤裸々に語った。洗脳による言動でロックバンド・X JAPANを解散に追い込んだ彼だったが、12年にもおよぶ洗脳状態から逃れるきっかけとなったのはそのX JAPANだった。Toshlとは幼馴染でX JAPANのリーダー的存在でもあるYOSHIKIはツイッターで「TV 辛くて見てられない」とつぶやいている。

Toshlは8月22日の『中居正広の金曜日のスマたちへ SP』(TBS系)に出演した理由を「自分と同じような被害に遭われる方がいないように…。自分は被害者でもあり加害者でもある。被害を受けた方に謝罪の意味も込めて真実を伝えられたら」と語っている。Toshlの自著『洗脳 地獄の12年からの生還』(講談社)に詳しく綴られているが、今回の番組出演で「X JAPANで成功を手にした彼がなぜ洗脳されたのか」をより広く伝えようと考えたようだ。

X JAPANの人気と共に、多額の収入を得るようになったToshl。しかし、その財産に目がくらんだ兄、母、信頼していた友人との確執から心身ともに疲れ果てていた。そんな状態が続くある日、彼が主役を務めるロックオペラ『ハムレット』のオーディションで目に止まった女性Kと知り合う。彼女こそToshlが洗脳される自己啓発セミナーのメンバーだった。そんなことは知らずに彼女の飾らないナチュラルなところと、親身になって心配してくれる優しさに魅かれていく。

彼女は「死ぬときは手と手をつなぎ逝きましょう」というような言葉を書いた短冊をプレゼントするなど、周囲への不信感でボロボロになっていたToshlの心に沁みるような言動を続けていくのだ。彼女から「飾らないでいい。そのままのあなたでいいのよ」と言われてX JAPANのトレードマークでもあるヴィジュアル系メイクを止めて黒髪にスーツでステージに立つようになった。やがて2人は結婚。そして、次は脱退へと進むのだ。

X JAPANのメンバーもToshlが何かに苦悩していることは気づいていたのだろう。彼から「脱退したい」と明かされてYOSHIKIは「分かった」と受け入れた。ただ、ギターのHIDEは「ボーカルがいなくなったらどうなるんだ。X JAPANはToshlくんだけの人生じゃないんだよ」と猛反対していた。だが、1997年4月にToshlは脱退を表明する。

同年9月、Toshlは妻に連れられてそのセミナーの主宰者Mと会う。その後、3日間にわたるセミナーを受けることなり、巧みな手法で「自分はダメな人間だ」、「親や兄弟が憎い」といった意識を強くする。実はセミナーの参加者はToshl以外はセミナー団体のメンバーだった。彼の財産に目を付けて主宰者Mが女性Kを利用した綿密な計画で近づいてきたのである。

Toshlはセミナーに通うようになり、その度に主宰者Mと妻Kによる恫喝や暴力で洗脳されていった。「X JAPANは諸悪の根源だ」「お前のような奴が使うとお金は世間の毒になるが、俺(M)のように立派な人間が使えばお金は世間のためになる」というような思考も植えつけられ、セミナーに多額なお金をつぎ込んでいった。

そして同年12月31日には東京ドームで『THE LAST LIVE~最後の夜~』を行ったToshlだが、そのラストライブの日も、セミナーを訪れて恫喝と暴力を受けてからステージに立ったという。VTRでそのライブの映像が流れたが、そんな影響を見せずに歌う姿はプロフェッショナルを感じさせた。時おり天を仰いで絶句する姿は最後のステージに感極まったからだと思われたが、実はセミナーのことで「頭の中は真っ白。恫喝や暴力が甦った」からだった。

そんな彼の姿に「Toshlくんっ! パーッと! パーッと!」と大声で話しかけてくれたのがHIDEだった。Toshlは「HIDEのおかげで、パーッと迷いが晴れた」と当時を思い出す。セミナーのことも吹き飛んだようだ。「X JAPANは悪の権化だ」と洗脳されたToshlだったが、ラストライブでセミナーとの葛藤から救ってくれたのはそのバンドのメンバーだった。しかし、その後、HIDEは帰らぬ人となった。

X JAPANを脱退した後も、Toshlは正体を隠してセミナーのCDを売り歩いたり、主宰者が作った楽曲をピアノで弾いて演奏会を開くなどお金を稼いではセミナーに納めていた。そんなある日、彼は主宰者Mに「実は『X JAPANを再結成すれば3億円払う』という話が出ている」と明かした。すると、Mは「X JAPANをこちら主導で再結成すれば凄いことになる」と言い出した。「X JAPANは悪の権化」という教えからの豹変ぶりにToshlは不信感を持つようになる。

これがきっかけとなり、Toshlはセミナー団体から逃亡するのだが、車に拉致されて暴力を受けるなど死の恐怖も味わった。それでも、周囲の援助もあり、やがてセミナーへの決別と妻との離婚が成立して12年間にわたる洗脳状態から抜け出すことができたのだ。

YOSHIKIはこうしたいきさつは十分に知っているはずだ。それだけに彼は『Yoshiki(YoshikiOfficial) ツイッター』で「TV 辛くて見てられない」とつぶやいたのだろう。しかも、放送の翌日には「実はもっともっと複雑」と本件についてと思われるつぶやきをしている。番組で語るToshlを見て、その複雑な背景が思い出されるのも嫌だったのではないか。

そんなX JAPANが先日、8月17日に新宿で国内では初のゲリラライブを敢行して話題となった。彼らは10月11日に米国はNYでマディソン・スクエア・ガーデン公演を行う。ゲリラライブの最後にToshlは「ニューヨークで待ってるぜ!」と大声でアピールしていた。洗脳された経験を「この痛みは一生続く。団体から脱出しても癒えることはない」と語る彼だが、そこから救ってくれるのはやはりX JAPANなのだ。
(TechinsightJapan編集部 真紀和泉)