エンタがビタミン

writer : maki

【エンタがビタミン♪】「たけしが映画さえ撮らなければ…」。事務所も傾きかけている? 北野武の厳しい現状。

第63回カンヌ国際映画祭コンペティション部門正式参加作品で惜しくも賞を逃したが、北野武監督の映画『アウトレイジ』は世界からその名を広めて日本へ帰国した形となった。それは映画の前宣伝としても効果抜群だったといえるだろう。この映画への北野武の気合いは並々ならぬものがある。封切前の彼のテレビ番組の露出はかつてない程ではないだろうか。その北野武にテレビ「メレンゲの気持ち」がインタビューを行った。

テレビのレギュラー番組も多数抱える北野武(以降、たけし)はどうやって映画を作る時間を捻出するのか。

大まかに説明すると、彼はTV番組を1週間で2本撮りするので、次の1週間を取材や映画制作にあてているのだ。通常、映画の撮影だけだとおよそ1か月半を要するが、このパターンでこなすため実質は、倍の3か月が必要となる。その後、編集するのに1か月、海外にも出す映画ならば翻訳もするのでその期間もさらに必要だ。

面白いのは、翻訳は日本語から英語、英語からフランス語という流れで訳していくので『伝言ゲーム』のようになり、果たしてフランス語で原文の意味がどう解釈されているかはよくわからないとたけし自身が語ったこと。

今回の『アウトレイジ』もそうした流れで完成にこぎつけたのである。これまでにも海外でも話題となる映画を撮り続けてきたたけしだが、実は最近の映画は観客動員数が少なく、状況はかなり厳しいらしい。彼は「映画は『座頭市』以来、連続でスカスカ。事務所傾いちゃって…」と現状を話す。そのため、たけしは事務所から「一番悪いのはたけしが映画やることだ。あいつさえ映画やらなかったら株主配当がずいぶん増えたのに」とこぼされているようだ。

たけしが映画監督として知られることになる『その男、凶暴につき』が1989年の作品なので、それからもう20年が過ぎたことになる。以降、『ソナチネ』(1993年)、『HANA-BI』(1998年)、『菊次郎の夏』(1999年)などの話題作を連発したがそのころに比べると確かに最近は大当たりがないのだ。

北野映画には暴力映画のファンが多い。「暴力映画を撮って欲しい」という要望が出続けていたこともあり、今回の映画に踏み切った。それだけに『アウトレイジ』にはたけしがこれまで培った暴力描写のアイデアが一気に開放されている。それについて、たけしは「普通の暴力ではつまらないので、いずれやろうと考えて書き溜めていたアイデアから少し変わった殺し方なんかを使った」と話した。

インタビューを行った久本雅美が『アウトレイジ』の暴力シーンを観て「すごい迫力で、目を覆っちゃった」と話すと、オードリーの若林にいたっては「思わず『キャッ』って女の子みたいな悲鳴が出た」と感想をもらした。

久々の北野映画ならではの暴力シーンは期待を裏切らない。多くの観客に楽しんでもらうことで、さらに北野映画を制作する環境が調うことを期待したい。
(TechinsightJapan編集部 真紀和泉)