世界で医学史上わずか60例ほどとされている顔面奇形で生まれた男児は、周りの人々の心無い反応を耳にしながら全盲の生活を送ってきた。しかしそんな男児を支えているのが母親と男児の家族だ。現在6歳になる男児の母親が、世間に伝えたいこととは…。『Barcroft TV』をはじめ『The Sun』『Mirror』など複数のメディアが伝えている。
米テネシー州ウッドベリーのブキャナンさん一家に2011年2月18日、クリスチャン君が誕生した。クリスチャン君の母レイシーさんは、夫クリスさんと15歳の時に知り合って恋に落ち、レイシーさんが21歳の時に2人は結婚している。23歳の時にクリスチャン君を妊娠していることがわかったレイシーさんは、夫とともに幸せの絶頂にあった。ところが妊娠18週目でクリスチャン君に問題があることが発覚したのだ。
クリスチャン君はレイシーさんの子宮内で、何らかの理由で破れてしまった羊膜がひも状の羊膜索となって胎児の体に癒着したり巻き付いたりすることで奇形が起こる「羊膜索症候群」を発症していた。ひも状になった羊膜は胎児の体や頭部など巻き付く場所は様々だが、クリスチャン君の場合は羊膜索が顔面に癒着し血流を停止させたことが原因で顔の中央部分を構成する組織が未発達となり、口唇口蓋裂と先天的疾患により全盲となる小眼球症を患って生まれてきた。
重度の顔面奇形により、クリスチャン君は生後4日目から経管栄養での栄養補給を強いられた。また生後4日目に手術を受け、NICU(新生児集中治療室)に4週間入院していたという。これまでクリスチャン君が受けた手術は7つ。そのうちの3つは顔面再建術と口唇口蓋裂の隙間を埋める手術だ。そして今後も複数の手術が控えており、ゆくゆくはきちんと話すことも食事を摂ることもできるようになることが望まれている。
待望の我が子の誕生を心待ちにしていたレイシーさんとクリスさんにとって、この事実は大きなショックとなり、落ち込みもした。しかし無事に生まれたクリスチャン君が成長してくると笑顔を見せるようになり、その笑顔に夫妻はずいぶん癒されたようだ。レイシーさんはこれまでの日々をこのように語っている。
「クリスチャンを連れて外に出ると、必ず周りの人はジロジロ見ました。中には『ちょっとあの子、いったいどうしちゃったのかしら』と囁く人もいます。最近でも、お店でクリスチャンを見た女性が『ゲッ』という声を発しました。ある女性は中絶しなかった私を『酷い人』とまで言いました。私自身、息子が生まれる前は他人と異なった容姿を持つことに対してさほど考えてはいませんでした。でも息子が生まれて、そうした違いに世間は残酷な態度を取ることも分かりました。ほとんどの人は、姿が普通と異なる人を前にするとどういうふうに対応すればいいか分からないようです。」
クリスチャン君への世間の心無い反応に大きなショックを受けていたレイシーさんだったが、