「心臓のことを考えながら飲み物や食べ物に気を付けて」とたびたび注意していたという家族。「好きなものを好きなだけ食べて」と言ってあげられないことはとても辛かったようだ。このほど76歳で他界した米ペンシルベニア州の男性。遺族は愛すべき人物であった故人の最後の望みを叶えたいとして、ある食べ物をそっと棺の中に添えてあげたそうだ。
フィラデルフィアから180キロほど北西に位置するルザーン郡プレーンズ・タウンシップに暮らしていたリチャード・ルッシさん。4人の子と7人の孫を持ち、狩り、釣り、スポーツを愛し、サッカーのコーチも務めた彼が心臓疾患につき死亡したのは10月10日のこと、76歳であった。家族は医師から飲食に関してよく監視し、注意するよう指示されており、リチャードさんは辛さを払拭するかのように「どうせいつかは逝く身。死ぬ時くらい自分の好きなものを食べたいし、腹が減ってはあの世にも行けないよ。何か持って行かなくちゃな」とジョークを飛ばしていたという。
生前たびたび故人が口にしていたそんな言葉。その望みは一体何だったのかと考えてみた孫のドミニク・ルッシさん(25)は、リチャードさんの大好物をふと思い出した。それはフィラデルフィアで人気のファストフード・レストラン「パッツ・キング・オブ・ステーキ(Pat’s King of Steaks 以下パッツ)」の“チーズステーキサンド”。数十年も前、友人とMLB「フィラデルフィア・フィリーズ」の試合を観に行って初めてパッツを知ったリチャードさんはその味に惚れ込み、フィラデルフィアに行く際には必ずパッツでステーキサンドを頬張っていたそうだ。
そして息子のジョン・ルッシさん(52)もこんなシーンを思い出していた。それは親族が集まるというと、2時間半のドライブになるにもかかわらずリチャードさんが「どうしてもパッツのチーズステーキサンドを皆で食べたい」と言い出し、子や孫がしぶしぶ了承して買いに出かける、そんなやりとりであった。