愛する家族が慢性の腎臓病で苦しんでいると知ったら、自分が健康であれば腎臓提供を検討するという人は多い。だが職場の仲間に対してもまったく同じ気持ちになれるものであろうか。米アラスカ航空にまさにそれを実行に移した心優しいパイロットがいることを『ABC News』が伝え、多くの感動を呼んでいる。
珍しい女性パイロットとしてアラスカ航空に勤務しているジョディ・ハースキャンプさん。今から4年前、彼女の自宅は火事で全焼してしまった。焼け出された彼女を心配してラザニアを手に見舞っていたのは、それまで会話ひとつしたことのない客室乗務員のジェニー・スタンセルさんであった。ジョディさんの操縦の腕を信頼し、尊敬していたジェニーさん。3人の子を育てながら客室乗務員の激務をこなすジェニーさんを人生の先輩として慕うようになったジョディさん。2人はそれを機に親しく交流するようになっていった。
そんななかジェニーさんを15年間にわたり苦しめてきた慢性の腎臓病が今年になってさらに悪化し、医師からは「腎臓移植だけが唯一残された手段」と告げられた。この時に親身になって心配したのはジョディさんで、彼女は医師に「ジェニーに腎臓を提供したい」と名乗り出てくれた。数々の検査を経て3月には腎移植手術が無事成功。術後の経過はともに順調で、6月下旬にジェニーさんは「マラソン山(Mount Marathon 標高921m)」の登山レースに挑戦したが、ゴールではジョディさんが「私のもう1つの腎臓はこの山にいる友人の身体の中で生き生きと機能している」と記されたサインを掲げて待っていた。この時「ともに頑張って生きていこう」と強く認識した2人は、その後は臓器提供の重要性を説く活動にも積極的に参加しているもようだ。