3歳で自閉症と診断されたボー・パスケ(Bo Paske)君の母親のリー(Leah)さんは、ボー君の学校での様子が気になって仕方がない。「今日は学校で悲しいことはなかったかしら…」「ランチはだれと食べたの?」毎日学校から帰ってくるボー君にこんな質問を投げかけていたというリーさんは8月30日、友人から送られてきた1枚の写真を見てあふれる涙をとめることができなかった。
この日、米フロリダ州タラハシーにあるフロリダ州立大学(FSU)のカレッジフットボールチーム「セミノールズ(Seminoles)」で活躍するアメリカンフットボールの選手たちが、ボー君の通うモントフォード・ミドルスクールを訪問していた。セミノールズは、これまでに3度のナショナル・チャンピオンに輝くなど強豪として知られている。
友人がリーさんに送った写真に写っていたのは、他の生徒から離れ、カフェテリアの長いテーブルの端に座ってランチを食べるボー君の姿。でも1人ではない。向かいにはある男性が座っていた。「彼は誰なの?」そんな質問を友人に投げかけたリーさんだったが、この日の出来事を綴ったリーさんのFacebookへの投稿が切なく、感動的だと全米のメディアがとりあげた。
リーさんの投稿はこう始まる。
「ここ最近、中学生のころの自分を思い出しては、自分に尋ねるのです。“中学校の先生ってどんな人だっただろう” “友達はたくさんいたかどうか”とか…。私は男の子にいじめられたこともあって、中学ってちょっと怖かった。結構大変だったなぁって、いろいろ思い返すのです。」
「息子が中学に入って、あの頃の自分を重ねてみた時に、あの子はきちんとやっていけるだろうかってどんどん不安になるのです。そんなの心配しすぎよって言われればそれまでですが。」
「ここでこんなことを言ったらひどい母親だと叱られるかもしれませんが、息子が自閉症で良かったなって思うことがあります。あの子が興奮して手をバタバタさせると、たくさんの人がじーっと彼を見ます。でもあの子はちっとも気にしない。あの子はもう他の子のお誕生会に呼ばれなくなったことにも気づいていないのです。私はあの子に毎日同じ質問をします。“今日は誰とランチを食べたの”ってね。するとあの子は、ほとんど毎日“ひとりだよっ”て答えるんです。そんな日は私が切なくなります。でもあの子はひとりぼっちのランチでも気にしないみたいなところがあって…。自閉症であることが何か、私の救いになっている気がするのです。」
「息子は笑顔を絶やさない、優しい子です。それに出会った人には必ずハグをしてくれるんです。今日、私の友人が“トラビス・ルドルフ(Travis Rudolph)選手があなたの息子とランチを食べているわよ”と、1枚の素敵な写真を送ってくれました…。FSUセミノールズのワイド・レシーバー、トラビス・ルドルフ選手が、どういう経緯で息子と一緒にランチを食べることになったのかはわかりません。でも私は涙があふれてとまりませんでした。今日は息子がひとりぼっちで食べているかどうかって心配する必要がないんだわって。息子はとっても優しい、みんなが憧れるスーパースターと一緒に食事をしてるんだって。そう思ったら嬉しくて。この日を忘れることはできません。トラビス・ルドルフさん、あなたには本当に感謝しています。私たちは一生あなたを応援していくつもりです。」
リーさんの言葉はたくさんの人の心に響き、この投稿はその日のうちにルドルフ選手の知るところとなった。ルドルフ選手は「ひとりでぽつんと座っている子がいたから、一緒に食べようって話しかけたんだ。クールな子だし、また話をしたいよ」と語り、自分の小さな行動がニュースとなって世界中に伝わっていることに驚きを隠せない様子だ。
ちなみに一躍注目の的となったボー君だが、これをきっかけにひとりでランチを食べることがなくなったそうだ。リーさんは、「9月2日のランチでは、たくさんの女の子に囲まれていたようです。ボーは今ではとっても人気者のようです」と嬉しそうだ。リーさんの隣では、笑顔のボー君が母親をしっかり抱きしめている。
出典:https://www.washingtonpost.com
(TechinsightJapan編集部 A.C.)